フリーズ・フリーズ・ミー
最悪な状況がさっきから、いや、昨日から続いている。

ぼくのPowerMac8100/80は起動と同時にフリーズし、Finderを強制的に再起動させてもCD-ROMをマウントしようとしない。つまり、システムの入れ替えもままならない状況になっているのだ。

本当なら今日あたりは春の日差しに誘われてハッピーな気分のままビールでもひっかけて自転車でふらふら花見でもって感じなのに。そう、そう言えば今日は先日買ったDeskWriter660Cが届く日だから、そういう意味でも楽しみな日だというのにこんな調子だ。こんな日にエッセイどころじゃないんだけど(ああ、いまもまた再起動後のデスクトップが何も表示しないままフリーズしてる)、昨日が締め切りだったから書かないわけにもいかない。

昨日までに書かなかったのが悪いって?そうじゃないよ。書いてたさ。ほら、今リスタートしただろ。彼の中にある。でも、本当は途中までだったんだけど。今回の原稿は(ぎゃ、今やっと外付けHDで起動できるとこにこぎつけたのに、こいつもCD-ROMをマウントしないぞ!)、「いろんなものが次々と故障してね、もうそれは予算取り合戦に違いない」てなことを書いてたんだ。すると言っているそばからこんな状況だからシャレになんない。しかも実は「何かが故障すると次々と・・・」という原稿は去年も書いていて、それも書き上げる前にボツになっているから恐ろしい。いつか供養しなければ(ああやっと CD-ROMからの漢字Talkインストーラが立ち上がった・・・ってさっきから時計が回りっぱなしで先に進まないなあ)。

おとといは確かにハッピーな気分だったのさ。東海道線のぼくの向かいの席に座った男性は「MacFan」を熱心に読んでいて、ラジオのFM横浜では(最近ぼくは小さなラジオを携帯してるんです)「Mac買っちゃったあ。e-mailちょうだいね。IDはね、教えないっと」てなリクエストカードが読まれて、そういうのがなんか楽しかった。ていうのも、ぼくのひざの上のデイパックの中には小さいHDが入っていて、これにはCD-ROMのマザーデータが入っている。その納品に向かっている途中なのだ。そう、仕事が終わってホッとしたとこだ。

内容は、大手広告代理店の社内資料をHyperLinkModeler(HLM)というソフトでハイパーテキストのマルチメディアデータベースに構築したものだ。仕事の依頼が来たのが2月の中頃で、ぼくは幕張の MacExpoで発売になったばかりのHLMでそれを作ってみようと思った。

しかしそれからが大変だった。購入したHLMはMacExpoに間に合わせるためだけに販売したという完成度で、v1.0ではあったけどベータバージョンにも届いていないバグだらけの代物だった。とにかくすぐにフリーズしてしまうのだ。しかし、納期は1カ月後と決まっていたし、後戻りもできない状況だった。そこでHLMのサポートに毎日のようにFAXやe-mailや電話をかけて、バグをフィックスしてもらってはそれで試すという日々が続いたのだった。作業を進めながら、 HyperCardかDirectorで作り直すことになるかもしれないと半分は覚悟していた。

でも何とか、HLMサポートの迅速な対応もあって、ギリギリで納品にこぎつけた。そして、それを大事に抱えてクライアントに届け、それをデモすると(1度もクラッシュせずに!)無事にプレゼンは成功。相手は期待以上のできにすごくよろこんでくれて、もうぼくはとてもハッピーな気分になって、すぐに協力してくれたデザイナーに「めし食おう」と電話したのだった。

その夜は寿司をカウンターで食いの、タクシーで銀座のバーに出かけの(ぼくが銀座で飲むわけない。すなわち、ここからのぼくの支払はなし!)、店ではサーフィンとスノボとMacとファーストフード店の話で盛り上がりの(そうそう、元オニャンコの生稲ちゃんがいた。けっこうかわいかったぞ)、その日はデザイナー宅にお世話になったのだった(ヨシ!システムの再インストール完了だ)。

翌日、少しハイなままその足で秋葉原へ直行。QV-10aとDeskWriter660Cを買って、ってしているうちになんだか体がだるくなってきて「もう帰ろ」って電車に乗ったら気分悪くなって、東京駅のトイレでフロッピーイジェクト状態。薬局で二日酔のドリンクを2本飲み、東海道線で凍ったまま帰り、茅ケ崎駅ビルのルミネのトイレで再びイジェクト。へろへろになって家に帰り付くとしばらくして電話が鳴って、

「CD-ROMが動かないんだよ」

そんなあ、すべてハッピーだったのに・・・


ASCII MacPower 1996.6月号掲載
Go To:ESSAY Index - 1996