Not Too Bad.
昨日、波打ち際のプルアウトに失敗して自分のサーフボードが右足のふくらはぎに当たってしまい、そこが腫れて痛い。でも、同じようにプルアウトで自分の顔にボードを当ててしまった顔見知りのショートはまぶたの上が切れていたから、それに比べればたいしたことではない。

今年のGW(ゴールデンウイーク)は、まあ上出来だった。GW突入の助走からして悪くない。土壇場までトラブル続きだったCD-ROMマザーも無事納品できたし、TBSサービス、F2、Macromediaの人と立て続けに会食もできた。

前回エッセイで書いたトラブルの原因は、何のことはないSCSIケーブルの不一致。出戻ってきたハードディスクに合うケーブルがなかったので、手元のケーブルをその場しのぎで使ったら見事にはまったというもの。なにせ「スーパーNGだよ」とバイク便で出戻ってきたから、原因はデータにあるとばかり思っていた。でも、それは違って、データは正常。「スーパーNG」というのをよく聞いてみると、ただ単にエイリアスファイルがうまく見つけられないだけだった。

でもこれにはオマケがある。再度納品に行って、動作確認して、「じゃ、よろしくね」と請求書を目出たく手渡しして、その足でMacromedia社に直行。焼き肉をごちそうになり(Tシャツもらった!)、同席していたTBSサービスの友達とTBSビルへ。「Hyper Link Modelerってなかなかいいよ」って、納品したばかりのCD-ROMデータで簡単にデモしたらデータのミスを発見!!「うひゃ〜」って納品先にとって返すハメになる。

納品先に出戻って、簡単な修正だからと使っていないMacをひょいひょいとセッティング。ところが、電源を入れてもいつまで経ってもMacが起動しない。「おや〜ん? 」て確かめると、接続したマザーデータの入ったHDとMOドライブのSCSI番号がぶつかっている。

そこで番号を変更してリスタートする。が、また起動しない。「そうだ、ケーブルだ」とケーブルをとっかえて起動するとMOは認識するのに、なんとしたことかHDをマウントしない。ここであわてず、念のためにHDだけをつないで起動する。しかし、やはりHDをマウントしない!ここではじめて「ぎゃー、マザーデータがああ」(と、心の中で叫ぶ)。

別室にいたクライアントに「ちょっとトラブっちゃてさ」と平然と告げ、冷静な顔をして「このHDに付属してきた専用ユーティリティは?SCSI Probeは?」って聞くとどちらも持ってないと言う。「じゃあ、ノートン・ユーティリティは?」と聞くと、それならあると言うのでインストール開始。とりあえずマウントできなければ何も始まらない。

ノートンのインストールが終わったので、再度チャレンジ。しかし、ノートンをしてもHDを認識できない。絶望的な気分。と、ここまでやって、もう一度ケーブルチェックをしてみると、なんとコネクタがきちんと刺さっていない!「ウゲ、なんという」。

コネクタをちゃんと差し込んで再起動すると何事もなくマウント成功。で、そそくさとミスデータを修正。ノートンのパッケージまで出させておいてケーブルが刺さってなかったなんて恥ずかしくて言えません。「もう大丈夫。直ったから。うん。OKよ」と大重大先生は帰る。

その足でまたも前回書いたデザイナーの事務所に直行。そして、この顛末で大笑い。あんましおかしいから、またも朝まで飲んで、翌日はいっしょに二日酔いのままサーフィンに直行。すると波があるんで、もうへろへろに楽しいGWの初日になる。

GW期間中には、R子さんが使っているPowerMac6100/60AVのクロップアップを行い(でも、ぼくが勝手にやったんでR子さんのご機嫌を損なう。速攻で元に戻して、楽しみにしていた本人がもう一度最初からやり直した)、次の仕事として請け負ったDirectorムービーのプロトタイプを作り、野茂の気合いの投球を観て、何本かの質問メールに回答して、そして、締めくくりにこの原稿を書いている。

そう、ぼくの場合それほど悪くない。ぼくが書いた本が書店に置いてなくても、ぼくの原稿に見知らぬ誤植が紛れ込んでいても、親切に答えた質問にお礼が来なくても、ぼくが考えたアイデアが誰かのものになっていても、代わりの本が売れるだろうし、誤植なんてあふれてるし、便りのないのは良い知らせだし、アイデアだけでは実を結ばない。

ただ、いつもそうだとやるせない。そればっかだと張り合いがない。そうでしょ。ぼくは自分の本が売れないことより、別の本を選んでしまった人をかわいそうに思う。だって、ぼくの本が一番わかりやすいのだから。ぼくはそう思って本を書く。でないと、何カ月もかけて書き上げる意味がない。無意味だ。自分の仕事の放棄だ。

きっとみんなそう。自分が最高の仕事をしたのをわかっているのに、それを求めている人に正しく届かないと悲しい。ずばっとフォークで三振奪えるのに。芸術的なキックでサイドネットを揺らせるのに。

ねえ、いま一番悲しんでるのは誰だろう。それを考えると、ぼくはそれほど悪くない。


ASCII MacPower 1996.7月号掲載
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