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柳島がブレイクしないんでぼくは帰ってしまったんだけど、買ったばかりのボードをまだ試していない千ちゃんは納得がいかず、一人で辻堂に行く。家に帰り着いてメールチェックをしてしばらくすると松井ちゃんから電話が入る。

「千ちゃんは辻堂に入るって。ぼくも高速に乗っちゃったよ」

松井ちゃんもニューボードを買ったばかり。だから波があるんだったらサーフィンしたくてしかたない。

さてどうしたものか。でもその前に受信メールを整理して、エラーメールは原因を調べて処理して、返事もいくつか書かなければならない。

いま、1日に50〜100通のメールがぼくには届く。ぼくから出すのは、返事も含めてだいたい10通程度。この数は、普通の人よりちょっと多い量だろうけど、誰よりも多いわけでもない。むしろ、多くの人にとっては平均的な数字に近いかもしれない。

普通の人より多くて、多くの人には平均的な数字というのは矛盾しているようだけど、うそじゃない。いまや多くの人にとって、1日に50〜100通のメールを受けることは当たり前になっている。メールを100通もらって、返事を書くのが10通程度ってのも納得いかない数字かも知れない。でもこれで誰にも失礼がない。

ぼくに届くメールは4種類ある。1つ目は、知人などから届くメール。2つ目は、契約している電子メール新聞。3つ目は、メーリングリストからのメール。最後の4つ目は、ぼくが開いたメーリングリストのプログラムが送ってくるエラーやID登録などの通知メール。そしてもう1つ追加すると、ぼくはMagicLinkを持っているんだけど、MagicLink宛にメールが入ったときにそれを通知するTelescriptからのメールがある。

メーリングリストというのは、あるメールアドレス宛にメールを送ると、そのメールがメーリングリストに登録されている利用者全員に対して自動的に転送されるというサービスだ。

機能的には同報通信メールやパソコン通信の電子掲示板と同じように見えるが、実際にはずいぶん趣が違う。メーリングリストは、何というか、限りなく1対1のメール交換に近くて、限りなく間近で他人の会話を横聞きしている感じだ。

AさんとBさんが交わしているメールがぼくのところへも届く。それは少し不思議な感じがする。もし本当に、郵便屋さんが二人が交わしている手紙のコピーをぼくの郵便受けに毎日投げ込んでいくとしたら、それはどう考えてもヘンだ。ま、ちょっとは興味あるけど、人の手紙を面白がって読むのはあんまりいい趣味とは言えない。

ところが、メーリングリストだとこれが少しもヘンではない。ある朝、たとえば「Mac互換機のthe machineTypeの値はどうなるんだろう」という疑問のメールが届く。それを読んでぼくは、どうだろうと考える。するとしばらくして「自分がわかるのは次の通りです・・・」と値のリストが送られてくる。こりゃいいものを手に入れたと喜ぶ。「Windowsマシンの256を返すばかやろうはいないと思うよ」と新しいメールも入る。確かにそうだろう。Macかそうでないかは判断できるわけだ。するとまたしばらくたって、「Director 5.0からはthe platformという関数があると聞きました」というメールが来る。ナニ?!そうなの?ってわけで、ぼくはおもむろにDirector5.0のマニュアルを調べて確認。そして、「大重です。the platformという関数があります。戻る値は・・・、この意味は...、つまり、たとえば次のようなスクリプトが・・・、プラットホームに適正なキャストメンバー5をセットできることになります」と知ったかぶってフォローする(すると、さすが大重さんだあ。何でも知ってらっしゃるウと尊敬される。がはがは)。

ぼくは現在、目的の異なったメーリングリストに4つほど入っている。そして、そのうちの1つは、ぼくが主催しているものだ。ぼくは半年ぐらい前から自分のメーリングリストをもちたいと思っていた。

いままで、ぼくが何をやっても何を書いても何のリアクションも届かない場合がほとんどだった。もしかすると出版社に寄せられるハガキの中には、ぼく宛の内容もあるのかもしれない。でも、それはまず、ぼくの手元に届かない(理由は出版社や担当者の怠慢)。いやきっと、あらたまってハガキや手紙を出してまで著者に何か言いたいということはないのかもしれない。

ところが最近になって、ぼくのところに読者からのメールがよく舞い込んでくるようになった。その内容は、まあ、ちょっとしたお世辞と結局のところ何かの質問だったりするのだけど、電子メールというのは出す側も受け取る側も無用なプレッシャーがなくていいなあとつくづく思うのだった。

で、そういう読者からのメールに返事を書いているうちに、ぼくには1つのことがはっきりしてきた。これまで、読者が著者に連絡をとることは簡単じゃないだろうなあと思っていたけど、むしろ、著者が読者に連絡を取る手段がまったくないということに気付いたのだった。もちろん、原稿の中で読者に呼びかけることはできる。でもこれは、何にも成していない。

そこでぼくは自分のメーリングリストを作った。自分の著書や雑誌の原稿を読んでいる人を対象としたメーリングリスト。名前は「4dollars」(4dollars→4ダラーズ→4ドルズ→よんどるず→読んどるズ (^^;; )

メーリングリストのメリットはたくさんある。誰か一人の質問に答えれば、それだけでたくさんの人の疑問を晴らすことができる。ぼくが答えられないような疑問にも、メンバーの誰かがいいアイデアをもっている可能性は高い。それは、いろんな人をメンバーに引っぱり込めばそれだけ高まる。書籍や雑誌原稿には書けない不確定なことも自由に書ける。原稿の誤りを正したり補足することもできる。当然、雑誌などよりもリアルタイムだ。

でも、こんなふうにメールチェックなんかしてるから出遅れて辻堂に出かけたときはもう風が出てきて、サーファーもわんさか居て、危うくボディーボードの女子とぶつかりそうになって、抱き合ったままぐるぐる卷きになって、顔はお尻で潰されるわでちっともいいことないんだからあ。ほんと(^_^);

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メーリングリスト$4に参加したい人は、インターネットのメールアドレス、majordomo@mma.so-net.or.jp宛に、次のメールを本文に書いて送ってください。

subscribe oshiget-4dollars
end

詳しくは、Infomation of $4をどうぞ。


ASCII MacPower 1996.8月号掲載
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