日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか 単行本 - 2014/10/24 矢部 宏治  (著)

「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」 - r2
の著者であり、
「戦後史の正体」 - r2
など「戦後再発見」双書の編集者。

安保や原発や、なぜ日本はこうなのか?という人の感情に訴える味付けがされているが、私がこの本を最後まで読み通したのは、歴史的な事実がわかりやすく整理されて並べられているから。(最初に言っておくと、この本について、右とか左とか転向とかの単語で判断したり批判する人は、頭の固い古い人種と思っていいと思う。どのような味付けがされていようと、素材を調べ抜き書きしておくのは大事。)

「平和のための戦争論 : 集団的自衛権は何をもたらすのか?」 - r2
に、謝罪とか反省は置いておいて、日本人自身のために事務的にただ事実だけを検証すべきと著者が語っていたのに、その通りだと思ったが、憲法についてもそもそも今の憲法について成り立ちを調べて公開するのは絶対必要だと思う。今はみんなが真実を知っているという前提がないので、議論も出来ない。

(冷戦期に高まった北方領土問題(今は誰も気にしてない)。あのとき、ソ連はゆるせんみたいなのが国民一致の感情だったが、条約を調べると実際はソ連の言い分の方が正しかったことがわかった。国際法や条約を調べるって大事だなと思う。)

(天皇制を共産主義から守るために、昭和天皇がそんなにいろいろ手を尽くしていたとは。日本国民は天皇を慕って忠誠を誓っていたが、昭和天皇は国民を信頼していなかったのだろうか。これって目障りなチンピラを排除するために強そうなギャングに頼ったために、後々ギャングと縁が切れなくてかえって大変ことになってしまうというパターンに似てる?)

この本によると、日本国憲法の第9条2項は国連憲章とその元となった大西洋憲章の精神を汲むものらしい。草案はGHQの独断によるもの。たしかに憲法を作ったのは占領軍だった、しかしそれは当時の日本人には作れないすばらしいものだった(著者)。

国連憲章には「敵国条項」というのがあり、それは具体的にはドイツと日本だが、ドイツは戦後の努力(EUの枠組み作りなど近隣国との関係改善)によって対象からはずれることができた。現在も敵国条項に該当するのは日本のみ。

わたしは今まで日本がアメリカによって、ソ連や中国の台頭を抑えるために利用されていたのかと思っていたが、実際は、日本が再軍備してアジア地域を混乱に陥れないよう見張られていたのが真相と知って、あーあと思ってしまった。日本は守られる(ふり)立場ではなくて、日本が加害者にならないよう抑えられていた、わけですね。

戦後に冷戦構造と経済発展があったため、敗戦国から這い上がるという努力が免罪されていたが、気がつけば日本と同盟関係にあるのはアメリカのみ、そのアメリカもグローバル化への反動から国内主義に戻りつつある。日本の経済力も落ちた。まわりに友達誰もいないじゃんという。。。

「平和のための戦争論 : 集団的自衛権は何をもたらすのか?」にも安全保障とは武装だけではなくて、周辺国との信頼関係が大事と書かれていたが、この本でもやはり、もう一つの「連合国にとっての敵国」であったドイツにならって、過去について客観的に検証し他国と友好関係を築くのが大事と結ばれていたのに、うなづいた。

ローレンス・トーブが「3つの原理」でアジアにEUのような儒教ブロックができる、しかしその中心となるだろう中国に日本が順応できるかどうかが鍵と書いていたが、どうだろうか?日本人は権力者ではなくてプロパガンダに従うらしいので、広告代理店ががんばればなんとかなるのか?

この本のFacebookページ
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著者のインタビュー
矢部宏治 | IWJ Independent Web Journal


*イギリスのEU脱退、アメリカで差別主義者の大統領候補擁立などのニュースを見ると、やはりグローバル化の反動であるブロック化が急速に進んでいるという感じを受ける。「静かなる大恐慌」に書かれていたシナリオ通りになっているなあと怖くなる。