シャミです。もうネコを8年もやってます。みなさんはよく「あーあ、ネコにでもなりたいよ」なんておっしゃいますけど、ネコもけっこう大変なんです。ネコの仕事というのは生易しいもんじゃありません。なんてったって人間が相手ですから。

あたしは子猫の頃のことははよくおぼえていません。気がつくとお腹がすいてノミだらけで毛皮も顔もボロボロでした。鼻がつまって苦しくてぼーっとしてますと、何かに持ち上げられてあったかい場所に運ばれました。そしてなにかがミルクをくれました。あたしは夢中で飲んでガクっと寝ました。目がさめるごとにミルクを飲んで元気が出てきますと、仕事を始めました。

あたしたちネコは子猫時代に、まずは就職口を探すようプログラムされてます。うんと愛らしい顔をつくって、ありたけの声で鳴いて、カモがかかるのを待ちます。知らないうちにカモの方から手を差し伸べてくれたこの機会をのがすわけには行きません。

幸運なことにあたしのカモたちは子供がいなくて動物好きのようでした。あたしたちネコを必要としている人というのは、どこかさみしがりやの部分を持つ人が多いです。そんな人のこころをあっためて、かわりに御飯と安全な家を提供してもらうのが、ネコのビジネスです。

同じような仕事にイヌというのがありますが、あっちは我々よりはるかに劣る単純な仕事です。どこが違うかって、それはこっちはネコがビジネスだってことに気付かせないとこです。たとえば接待だと気付かせない接待、それが究極の接待でしょう?

「なにもしないのにメシの文句ばかりいいやがって、でもたまには可愛いと思うからいいか」と言われるのがネコの仕事への最高の賛辞です。仕事してるのがありありとわかるネコなんて気詰まりじゃないですか。

ネコは子猫のうちは可愛らしさがウリなわけですが、ブサイクに生まれついたからといって悲観することはありません。むしろちょっと変なところがあった方が味わいが出るようです。たとえばあたしは鼻の上に富士山型の模様があり、右のマユゲの2本の先端がくるくると縮れています。これがどことなく全体のアホらしさをかもし出していて仕事をする上で有利になっています。

あ、仕事だ!このつづきはまたこんどね

00/03/19