オオシゲ2000
さて今回は何を書こうかと考えてもなかなか思い付かない。こんなときは、風呂に入るか電車に乗るに限る。あるいは、PowerBookを持ってテレビの前に座るか、ベッドに入るか、車で近くの小高い山に入るというのがぼくの今までの処方箋である。

でさっそく、風呂を沸かして入る(本当は熱いシャワーでも効果絶大なのだが、今回は重病のようなので風呂を沸かすことにした)。するとまず、今度の号が12月号であることを思い付いた。つまり、1995年の総捲りでもいいし、来年のことを書いてもいい。が、今日はまだ10月3日なので年末3カ月のことがわからない。特にWindows95日本語版を見てからでないと今年は終わらない。

そう、それで思い付いたのだが、ビル・ゲイツは2年連続で世界のお金持ちNo.1だそうだ。なんてこった。ぼくはマイクロソフト社の株で大損こいたというのに。彼とぼくは年齢的に何歳も離れていない。いったいこの差はなんだ。

年齢と言えば、最近何がしかの集まりに出るとぼくより年上を見つけるのが難しくなってきた。20人の集まりでやっと1人いるかどうかってとこだ。しかも、年齢の差は離れるばかりで、ぼくより10才若いはごろごろしていて、20才若いという子が「どうも、はじめまして」なんて一人前の挨拶をしてくる。今年も終わってまた年をとって(実際のところ、ぼくの誕生日は12月なんでね)、技術というか知識というかそういうものの蓄積がまーたく行なわれないテクニカルライティングという仕事も行き詰まったぞと思うわけで、それでもってWindows95がバーンとあるわけでどうしたものだろう。

そうつまりぼくは、エッセイのアイデアに詰まっているというより、Macに詰まっているのだな。Apple社は再三にわたって身売り説が噂されるし、今期の営業見通しを誤って売上げ増大をみすみす逃したし、いつまでたってもPowerBookはA4サイズだ。

Apple社はWindowsをやっぱり甘く見ていたに違いない。それどころか、ぜったいにMacOSのほうが優れているのだからという理由で、今でもなんでWindowsが売れるのかわからないのだと思う。

Windowsの今回の成功はネーミングに尽きる。Windows3.1の次のバージョンをWindows4.0じゃなくてWindows95にした。これが大正解だった。常識的にはOS名に年号を入れて、バージョン管理はどうするのって思う。Windows96、97、98って作っていったら(そりゃドラクエみたいに毎年売れるだろうけど)、出さない年は「あれ?今年はどうしたの?」ってことになってしまう。あるいはWindows95なのに1995年発売ができなかったら、幻のWindows95になってしまう。これは冗談じゃなく危険性があったわけで、もし来年にずれ込んでいたらWindows96になったのだろうか。

もし、常識的にあるいは安全策としてWindows4.0で発売したらどうだっただろうか。MacOSはSystem 7になってから久しくて、ただでさえ「Mac OSに遅れている」「まだまだ未熟」と言われているWIndowsがver.3からver.4にバージョンを1個上げたとして、誰が夜中に行列するほど期待するだろうか(Macは7なのに)。

しかし、バージョンをWindows95にしたことで、この差を一気に縮めて帳消しにしてしまったのだ。今調べてみると、System7が出たのは1991年のことで、すでに5年が経とうとしている。この5年間に新機種が出るたびにバージョンアップがあったものの、それはMacユーザーのみが知ることで、外からは見えないことだ。「今年の新車です」って感じで新機種発表があるのがわかるだけで、OSの進歩がまるで見えなかった。ただばくぜんと「Macはいいらしね」というバージョンがあるだけで、止まっていたわけだ。言うなれば、MacOSが進化していることが一目でわかるようなデザインのマシンを投入してこなかったということでもある。そして、もうひとつの見方をするならば、MacOSは1987年頃にすでに2000年ぐらいのバージョンを描いていて、それを少しずつ作ってきた。これはつまり、本当にMacOSのバージョンは止まっていたと言えるわけだ。

Apple陣営は来年暮れにCoplandを出してWindows95を一蹴すると言っている。Apple社はCoplandがいかにWindows95よりも優れているか、Coplandを選ぶことがいかにあなたをパワフルにし人生を豊かにするか、一方Windows95を使うことがいかにあなたを無能にさせ貴重な人生を無駄に過ごすはめになるかという強烈に比較広告を行なうことだろう。事実、冷静に比較してもCoplandはWindows95よりもはるかに完成度が高いOSになるだろうと予想できる。しかし、それでもその翌年にWindows2000のキャンペーンが始まり、前倒しで1998年にWindows2000が発売になれば、またパソコンショップに行列ができてしまうのだった。


ASCII MacPower 1995.12月号掲載
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