シャミは食欲が不自由な猫だ。猫って、ぜいたくばっかいってこっちがやったものなんか見向きもしない、これはいや、あれもいや、もっとおいしいのないの?・・・ってのが猫と言うものだ。ところがこいつときたら、のべつまくなし何でも食べちゃうの。小豆とか炊きたての御飯とかにもヨダレをたらす。ほっとくと吐くまで食べる。夢の中でもなんか食べてる。眠りながら口を動かしてるときがあるもん。

シャミが絶対聞き逃さないのは冷蔵庫が開く音と電子レンジが開く音。家のどこにいてもバタンといった3秒後には足下に走ってきてる。わたしを台所に呼ぶためには何でもする。わざと物音をカチャカチャさせたり。「いい?これは絶対してはダメ」というのはシャミには「こうすれば私は台所に走ってくるわよ」と聞こえてるらしい。

シャミの胃袋は2つある。りっちゃん用と美幸さん用。わたしからごはんをもらって満腹になっても、もう片方がまだ空腹なので美幸さんからももらわないと気がすまない。

シャミにとっての楽しみはやはり食べ物だが、彼女が作った決まりがある。わたしたちがコーヒーを飲む時はミルクをもらえる。わたしがお皿を洗い終えると何か一口もらえる。お魚をさばく時骨に残った中落ちはシャミのもの。たまたま2回いいことがあると3回目からもそうじゃないと強い抗議に会う。

一番の愉しみは夕食タイムで、どうやってわかるのか私の料理が佳境に入ると「はやくおいでよ」と美幸さんを呼びに行く。さてと、と振り返ると「もうできたの?シャミが呼びに来たけど」夫が立っている。シャミも椅子をもらって食卓の上を眺めるのが好きだ。みんなが何をたべてるのかとっても気になるらしい。

シャミはどっかよその星から地球の食生活を研究しに来てるスパイだ。と美幸さんは言う。耳の中に受信機がかくされていて「もっと喰い下げれ、それをGETしろ」と指令が飛んできてるんだという。「それどんな味?たべさせて」と騒ぐシャミに美幸さんは「任務が厳しくて大変だね」と言う。

97/07/18