それが報いというのなら...
●1995.10.20(金)
次の待ち合わせは飯田橋で3時。ここから秋葉原に寄って行くには、本郷3丁目で丸の内線に乗らずにJRお茶の水駅まで歩いてもいいな。えっと、今2時か、急がなくちゃ。駅はこっちだよな確か。....

でも、何にしようかな。富士通かなコンパックかな、ああ、もう2時半だよ。これじゃ遅刻しちゃうなあ。走らねば。それにしても、アキバはいつきても人が多いなあ。....

ふーん、ディスプレイが付いているんだ。へー、1GBか。メモリは8MBでも勝手に仮想メモリを作るから動くって言ってな。あ、スピーカーとマイクも付属なんだ。4倍速CDか。おー、DSPボード内蔵だ。なるほどねえ。これで25万3000円か。どうすっかなあ。あー、もう時間ないなあ。も、いいやこれで。即納って書いてあるし。

「すみません。これ、即納ですよね」
「Aptiva 550ですね。はい、平塚でしたら月曜日にはお届けできます」
「じゃあ、これください。カードでね」
さてと2時50分か。走らねば....

●1995.10.23(月)
よし、じゃあ電源を入れよう。うーん、IBMロゴじゃあ。おお、Windowsじゃあ。しかし、なんでWindowsのカーソルってこうも不細工かなあ。
さてと、ほんじゃWindows95日本語版ベータをインストールしますか。
CD-ROMは音もなく回り、ハードディスクはグリグリ言わせながらシステムを書き込んでいく。何回か設定ウインドウに応えるとインストールの終了。マシンを再起動して、空になびくWindows95フラッグじゃあ!

ふーん、これがスタートメニューね。コントロールパネルとかあるわけね。なるほどなるほど、はいはい、ほーほー、ありゃま、えっどうして、ああそうか、やだなあ、これをクリックでこうね、右ボタンだとこうか、わかんないなあ、なんで、ま、こんなとこかな。

●1995.10.24(火)
「あれでよかったかな?うん、でしょ。じゃよろしくどうぞ」ガチャ。

ああ疲れた。さてと、電源ブイーン。HDグリグリグリ。IBMロゴ。システムチェック。ピーッ。Windows95フラッグ。

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プログラムが大きすぎてメモリ内に収まりません
C:\>
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なぬ?!どしたの?どういうこと?忙しいときに限ってこうなんだ。しかも、Windows95のCD-ROMは某社からの貸出品で、すぐに返却するように言われている。まいったなあ。しかし、C:\>は何よ。これ、DOSプロンプトじゃないの。

DOSプロンプトにコマンドを入力するのは8年ぶりぐらい。もうすっかり忘れちまった。あー、忘れた。覚えているのはディレクトリの中身を調べるDIRだけ。で、DIRと入力すると、だーっとファイル名がリスト表示されて終わり。最初の方は速すぎて見えなかった。確か、ページ表示とかオプションがあったよなあ。てな具合で記憶をたどってみる。

しかし、どっちにしろこんな感じではシステムを復旧できそうにない。そこで、DOSハッカーの異名をもつ18歳の青年に電話する(一気に老け込んでしまう自分)。

「Ctrl + Alt + Deleteで再起動できますから、メモリチェックが終わったとこでF8を押してください」

彼の電話での指図に従ってリモコン状態の私。

「そうですねえ、ちょっとconfigを開いてみてくれますか。書き直しましょう」
「はいはい。これでよし。で、リスタート。おー、CD-ROMがアクセスできる」
「Windows95はWindowsからセットアップするようにしてあると思うんですよね。DOSからやってうまくいくかなあ」

電話で2時間ほどやっているうちに、オリックスは逆転されてヤクルトに3タテを喫する。

●1995.10.25(水)
ぼくは寝ている間に覚悟を決めていた。Aptivaに付属のCD-ROMを調べてみる。やっぱりWindows3.1システムが入っている。よし、じゃあまず3.1に戻そう。そう決めて、Windows 3.1のsetupを決行。しかし、一瞬インストールが成功したかに見えたがダメ。

よし、こうなったら重ねてWindows95の再インストールだ。HDグリグリグリ。IBMロゴ。Windows95フラッグ。やったー!大成功。よしよし、アプリも動くぞ。ありゃ?モデムが認識されない。DSP使ってるんだから、音も出ないってこと?あちゃーやっぱり。どうして設定が生きないの?

マニュアルにはもう何も書いてない。「バックアップCD複写用ディスケット」てのには起動用の最小のセットのシステムが入っているだけだしなあ。でも、ちょっとAUTOEXECでも実行させてみようかな。あ、メニューが出ましたね。なになに?「ハードディスクを初期化と復元」「ハードディスク内容の復元」「PC DOS J7.0/Vの導入」「Windows3.1の導入」....ほうほう、なるほどね。

なぬ?!!!ってことは、このフロッピーでマシンを起動すればこのメニューが出て、CD-ROMからの復活を行なうのね?じゃあ、昨夜からの大騒ぎはナ、ナ、ナ、何だったのよ。

グリグリグリ、ハードディスクのフォーマット、Windows 3.1のコピー、アプリケーションのコピー、....グリグリグリ...。やったー、工場出荷状態に戻ったぞ。さてと、ほんじゃあWindows95をインストールしますかね。


ASCII MacPower 1996.1月号掲載
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