アリの社会では、働かずただダラダラしているだけのヤツが全体の何パーセントかは必ずいるらしい。
去年あたり話題になったアリ学者の本。ついにわかりましたよ!どうやって個体識別したか。プラモデル用の塗料を背中につけたそうです。その際アリが暴れると困るので、マーキング作業中はアリを冷やして動けなくしたそう。作業場所は熱い砂漠。アリを冷やすのに使ったのは、冷凍しておいたアイスクリームメーカーだそうです。(たぶんコレ)。この著者の本があるのはわかっていたのですが、すでに絶版になっていて(早)藤沢の図書館で借りました。
調査されたアリはアリゾナの砂漠に住む「アカシュウカクアリ(Pogonomyrmex barbatus)」というアリさんたち(体長約1cm)。1匹の女王は生涯に1日だけ複数のオスと交尾し、そのときの精子を体内に保存し卵を産み続ける。1匹の女王につき1つのコロニーが作られ、女王の寿命=コロニーの寿命である。その寿命は15〜20年!
できてから3〜4年の若いコロニーと、5年以上の成熟したコロニーでは、非常事態に対する反応がちがう。働きアリの寿命は1年ほどなので、経験で得た教訓が生かされているとは考えられない。何がコロニー全体の意志を決定するのか?
働きアリの仕事は担当が決まっているが、状況に応じて変わる。ただしそれは一方通行で、巣の保守→偵察→食糧収集と出世して降格することはない。そのアリが何担当かという情報は、アリの体表についている匂いにあり、アリ同士が出会った時、匂いで相手を判別する。
巣穴の周囲、または内部で、ある時間内に何担当のアリと何回出会ったか、そのカウントがアリの行動を決定する、と著者は仮定した。コロニーの年齢による行動パターンの違いは、コロニーの規模、アリの総数によるのではないかと。。。
あと、ニューロン相互作用とか複雑系とか難しい用語が出てきたんですけど、すっ飛ばしてしまいました。「アリの全体の何割かはいつもダラダラしてる説」については言及がありませんでした。この本が書かれたのは2000年、ダラダラ説が発表されたのは去年 (2004年)あたりです。
この本の訳者(池田清彦氏)は、自らも研究者で、あとがきで「ほとんどの社会性昆虫の研究者はネオダーウィニズム論者なので、この著者も無意識のうちに「無意味に思えるアリの行動にも危機回避などの意味があるはず」と考えているようだが、構造主義生物学者の私(訳者)はそうは思わない」とチクっと一言書いてありました。
著者:デボラ・ゴードンの研究室
The Gordon Lab
「構造主義生物学」って何ですか?
進化研究と社会:構造主義/構造生物学/構造主義生物学
あと、偶然数日前に見たサイト
なお、六月ころ結婚飛行を終えたサムライアリの新女王は、クロヤマアリの巣を捜して潜り込み、その女王をかみ殺して働きアリごと巣を乗っ取り、 新生活を開始する。虫の世界はまさに何でもありの感が深い。アリの世界も大変だ〜。