暗闇のなかの希望

8月にTUP-Bulletinで読んで、忘れられなかった。

トニー・ブレアに敬意を表して、私はガンジーの有名な金言を次のように読み
換えた——「先ず、彼らはあなたを無視する。次に、笑い者にする。そして、
あなたに敵対する。やがて、彼らはあなたの主張を取り込み、以前から自分た
ち側のものだったように装う。それでも、あなたがすっかり取り乱さなければ、
あなたが勝つかもしれない」。引っかかることがひとつ——それが勝利には見
えないこと。勝利がもたらすとされる満足感がない。栄光の爆発ではなく、小
出しにやってくる。見分けも覚束ない、予想もしないような形で姿を現わす。
変化は、まるでコソ泥であるかのように忍び足で訪れ、日常世界をコッソリ動
かす。勝ったとたん、あなたの勝利はあなたのものではない。まず、嫌な以前
の敵方のものになり、今では、彼らはそれがもともと自分たちのものであるよ
うにして取りこんでしまい、次にそれは歴史に属するようになる。
(レベッカ・ソルニット著 井上利男訳)

この本を読んだ後、著者の手に触ったような気がした。
すぐに結果が出なくても、諦めないでいよう。
わたしたちが生きているうちに望んだ光景をみることができなくても。

いつも家に帰るのが早すぎる。いつも成果を計算するのが早すぎる。母乳や
乳歯から検出される放射性降下物を撒き散らしていた地上核実験の終結を実現
した1963年の大勝利に寄与したアメリカ初の大規模な反核兵器運動「女性
のためのストライキ運動(WSP=the Women's Strike for Peace)」のメン
バーの手記を私は読んだことがある。その女性は、ある朝、抗議行動としてケ
ネディ大統領が執務するホワイトハウスの前で雨のなかに立っていて、ばかば
かしい、なんてくだらないことをやってるんだろうと思ったという。何年もた
ってから、彼女は、核兵器問題の活動家たちのなかで最も著名だったベンジャ
ミン・スポック博士[世界的ロングセラーの育児書を著した小児科医]が、女
性たちの小さなグループがホワイトハウス抗議して、雨にうたれて立っている
を見かけたのが、自分にとってのターニング・ポイントになったと語るのを聞
いた。その人たちがそれほど熱心になっているのなら、自分もこの問題につて
もっと考慮しなければならないだろうと博士は思ったのだ。