灯台守の話

灯台守の話 (単行本)

岸本佐知子翻訳。のっけからして、ええ?そそんなって。。。という設定。ぐっとつかまれたところで、孤児になった主人公が灯台守にもらわれてきた夜のこと、はじめて内部に入った灯台の暗闇の描写に、ああ、やられた。。。もうダメ。骨抜きになった。


はずみがついたところで、著者の自伝的小説「オレンジだけが果物じゃない」を読んでみた。かなり風変わりな育ての母親との格闘と自立の物語。 映画「キャリー」を思い出すんだけど、主人公は超能力で親や世間に復讐することもなく、淡々と自分の道を歩み始める。

オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険シリーズ) (単行本)

主人公は思春期の多感な時期に、他人から見れば大変な状況になってしまうのだけど、その自分の置かれた状況を1歩下って客観的に眺めているような、事実を受け止め、やるべきことをやる冷静さに共感が持てる。これは岸本さんの訳だから?このニュアンスは原語だとどんな感じなのかな?「灯台守の話」の闇の描写も英語で読んでみたい。

主人公も、母親も、周囲から「イカレテル」と言われながらも自分の信念を通す。自分の判断を信じ、努力を惜しまず、かなりやり手だ。信じるものは違っても、そのスタイルは同じ。

小さいころから、母親にカルト宗教の伝道師となるべくたたき込まれた、そのやり方によって、主人公は親から独立した。主人公は、親の望む姿には成長しなかったが、生きる力は親からしっかり受け継いだ。

親って大変だな。私の年齢のせいか、または自分も親の期待を裏切ってがっかりさせた類だからか、つくづく思う。子どもが最終的にどういう人間に育つか、親には選べない。基本的な生き方のスタイルしか叩き込めないんだな。