BORN TO RUN

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の
BORN TO RUN 走るために生まれた~
ウルトラランナーVS人類最強の"走る民族"
クリストファー・マクドゥーガル (著)
近藤 隆文 (翻訳)

はーっ!おもしろかった。前半はちょっとつらかったけど、ページが残り少なくなってくるにつれ、勾配が急になり山頂ゴールってかんじだ。

タラフマラ族という言葉をきいて、踊り好きな人なら「きいたことある」とおもうはず。あの「パパ・タラフマラ」ですね。wikiによると「タラフマラ」はアントナン・アルトーの著書『タラフマラ』に書かれているメキシコの秘境「タラフマラ」から取られたらしい。そしてアルトーについて調べると、彼はまた別の目的があってタラフマラ族に近づいたことがわかる。

すごーくシャイで他民族と接触せず、険しい山中に隠れて暮らす人々、文明人が失った運動能力や呪術的な文化を持っている人々、彼らに何かを求めて(たぶん勝手な期待)接触を図る人々は昔から居たわけだ。

この本の中でも、あのカスタネダの呪術師はヤキ族ではなくて本当はタラフマラ族だったという著者の説が出てくる。カスタネダが本を出すに当たり、シャイなタラフマラに迷惑が及ばぬよう、多少タフなヤキ族にしておいたのだという説。

この本では、植物由来の薬物の話はない。走ることで出てくるβ-エンドルフィンがあるし。

ーーーーー

人類がネアンデルタール人を抑えて繁栄した理由を「走り始めたから」とする説もおもしろい。ヒトよりも速く走れる哺乳類はたくさんいるが、長時間走れるのはいない。体毛がなくなったのは、発汗による最強の空冷システムを得るため、など。人類が2足歩行を始めたのは水中生活の時期があったためとする説以来の衝撃だ。

なぜ長時間走るようになったか、それはエサの動物を追い詰めて疲労死させるため。。。という推論だが、わたしはエサをとるためというよりは、エサにならないため、の方が自然な感じがする。最近読んだ本「ヒトは食べられて進化した」の影響かな?

ーーーーー

本書の最後は選ばれたウルトラランナーたちとタラフマラ族の非公開マラソン大会なんだけど、誰が勝つかなんてもうどうでもよくて、わたしもレースを見物している子供の一人になった気分で、ただただ楽しんだ。

著者は文章を書くのが少し不器用で、装飾過多だったり何を言いたいのかよくわからなかったりする。読む方も忍従が必要。けどゆるく長ーい上り坂を登っていると、最後に急に話が展開して読むのが楽になる。そのとき、分泌されていたβ-エンドルフィンの存在を感じられるだろう。読書にもランニング・ハイはある!

本を読み終えたときは、旅の仲間と別れるようで寂しかったな。

ーーーーー

わたしは走るのはあまり好きではなくて、有酸素運動では自転車の方がいいんだけど、今年の春高麗神社〜湘南平の起伏の多い山道を歩いたとき、帰りは行きと同じ風景で飽きたので、早く帰りたくて小走りに走ってみた。すると、けっこう楽しかったんだ。平地を走るようにドカドカではなくて、バランスを取りながら両手をひらひら使いながら、ふわふわと。サーフィンしてるみたいだった。

ーーーーー

カバーヨ・ブランコのサイトより
BARRANCA de COBRE TARAHUMARA