身近な草木の実とタネハンドブック

身近な草木の実とタネハンドブック [単行本] 多田 多恵子 (著)

年末に漂着物学会のメーリングリストで話題になっていた本。海岸の漂着物には実とタネも多いのですね。そして鳥見にとっては、野鳥のグルメ本。どこにいつどんな実がなるか、食べログ野鳥版を作っておけば、だいたい集まる鳥も予想がつくというもの。

先日髙麗山に行ったときも、鳥が集まっていたのは、沢沿いの水場と、実のなる樹。人間と一緒やな。なぜか盛り場は川沿い、食べ物屋が集まるところに人も集まる。

散布方法別に載っています。風散布、おとなしく雨を待つ水散布、精密機械仕掛けの自動散布、そして狡猾な動物散布。この項がおもしろい。特に目立ってきれいな赤い実のみなさん。パッと見はおいしそう、けど食べると渋い。ペッペッこんなの食えるかー!と飛び立つ鳥。そこまでが計算ずくらしいのです。一度にたくさん食べられて、その場でフンにまざって落ちてしまっては困る(野鳥の消化時間は短い)。ちょっと食べて、遠くに飛んでいって落としてくれなければ。。。いろいろ苦労があるんだなっていうか、すごいな、植物といえども客あたりの単価や、店の回転率を考えているわけです。

あと、実の大きさによって来る鳥が限られる。ムラサキシキブなどの小さい実ならメジロとかかわいい鳥が来てくれる。大きい実しかならない樹にはうるさいヒヨドリばっかりなんてことになる。

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大山で見たあのマムシグサもありました。見た目が毒々しくて好きになれないマムシグサも、実を付けるのに、根に貯めた数年分の養分を使ってしまう、ときくとなんか「あなたも大変なのね」という気持ちになります。

大山と言えば、先日の浜口哲一さんのシンポジウムで、神奈川県植物誌調査会の佐藤恭子さんが「花ごよみ調査」について講演されました。「花ごよみとは四季を通じて同じ場所で観察を重ね、植物の開花状況を記録したもののこと」だそうです。その具体的な記録としては平塚博物館発行の「湘南花の道」という冊子があります(きれいなおねえさんがいる博物館の受付で買えます)。

佐藤さんはあるとき「月に1回、大山〜不動尻を歩きながら、標高差による植物の開花時期の違いを調べ、それを1年間続けてはどうか」と思い立ち、浜口さんに相談されたそうです。すると浜口さんは、「それはね、わたしも考えてやってみたことがあるんだよ」と引き出しから記録を取りだして見せてくれた。それは下社〜見晴台〜大山山頂〜蓑毛のコースで月3回1年間の記録だった。という逸話を紹介されていました。