デモクラシー・リフレクション―巻町住民投票の社会学

デモクラシー・リフレクション―巻町住民投票の社会学 [単行本] 伊藤 守 , 松井 克浩 , 渡辺 登 , 杉原 名穂子

2003年12月、東北電力は新潟県巻町に予定していた原子力発電所建設計画を撤回した。32年越しの紆余曲折、全国で初めて原発立地を問う住民投票が行われて7年目。そのいきさつ。

巻町が住民投票を実施するにこぎつけた理由は
・工業化に遅れて過疎傾向にあったが、新潟市のベッドタウンとして宅地開発が進行。従来の地縁血縁のない人々が流入。原発の恩恵に無関係で快適な住環境を求める住民の増加。
・行政や電力会社への不信。原発建設に関わる情報の開示・住民自らによる判断材料への要望。
・政策決定に住民の意志が反映されていない事への不満。
・女性たちの政治への参加。
等があった。

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小出裕章氏は、原発を研究するうち、これは都市には建てられない。過疎地にのみ立地可能とわかって、原発の矛盾に気がついたと言っていた。巻町の場合、計画当初は過疎傾向の土地だったのが、周辺都市のドーナツ化現象によって、いつしか立地に適さない場所に変わっていた、というのもあると思う。町の税収も昔からの農業従事者、事業者からのものより、近隣都市に通勤する住民からの方が大きくなってきたんじゃないだろうか?

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この本は4人による共著。「政治社会学・社会運動論」「農村社会学・社会学史」「ジェンダー研究・文化社会史」「メディア研究」と、それぞれちがう分野を専攻している4人が、巻町という「場所」で起こった社会現象を、様々な角度から分析研究している。これぞ「トコロジスト」活動ではないだろうか。できれば経済関係の研究者もいればよかった。

幅広く多角的な視点から、ある狭い地点を研究する人、またはグループは、環境問題を考えるとき欠かせない存在になるだろう。