私たちはこうして「原発大国」を選んだ

私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ) [新書] 武田 徹 (著)

これまで読んだ原発関係の本は、発行部数の少ない学術書、または報告書ぽいのが多かった。これはサブカルぽい匂いのする本。こういう本があるのは、いいことだと思う。あらゆる読者に対応した、原発関連本があるべきなので。

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ノイマンはコンピューターを核兵器の爆縮(プルトニウムを爆発物で均一に囲って一気に臨界にする)の計算のために開発した。長崎では間に合わなかったが、水爆の開発で必要だった。そして先制攻撃されて報復するとき通信手段を確保するため、パケット通信、今のインターネットの元になるものが開発された。

ジョブズ亡き後、いろんな人がいろんな言葉を発表したが、そのほとんどは「あっそう」と通り過ぎ忘れてしまった。そのなかでオバマ大統領の弔辞「ジョブズの名前はその製品によって世界中に知られた」というその言葉はわたしの頭に残っている。アップルの開発を支えたのは国家予算ではなくて、ジョブズの神話に吸い寄せられた個人消費者と、無名の技術者たちだった。

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わたしは、スカリーの時代のアップルに短期間だが勤めたことがある。当時は日本に、販売・ユーザサポートを担当するApple Japanと、システムのローカライズを担当するUS本社の子会社Apple operations and Technologies Japanの2社があり、わたしは元Apple U.S.のエンジニアにしてKanjiTalkの開発者、ダン・ストリビの手下となって、Ops and Techに送り込まれた。

当時は製品のラインナップがとても多く、誰が使うんだ?というような首をかしげるようなのもあった。それが日本語環境で動くよういちいちテストしていた。社員同士でも「来月この会社ないかも」とささやきあっていた。当時のAppleを「学級崩壊状態」と回想する人のblogを読んだが、その通りだった。社内は業務についてのケンカが多く、いつもどこかで怒鳴り声がしていた印象。

そんな会社でも、ジョブズの伝説に魅せられていろんなエンジニアが転職してきた。なかには日本の大企業で有名な携帯システムの開発をしていた人などもいた。けどAppleは子会社の日本人にはソースを公開しない。ジョブズ伝説に吸い寄せられる優秀な頭脳を使い捨てていたと言っていいと思う。

当時やっていたのは、TrueTypeの開発だった。わたしはそれ以前に小さなデザイン会社に勤めていて家電製品や業務用大型冷機の表面に貼るプレートやシールなども作っていて、なにかと近所の小さな写植やさんに行って、文字を紙焼きしてもらっていた。いつも大量の印刷物を腕利きの職人さんが忙しくさばいていたその工場で、うちの発注は少量でほとんど儲け外だったとおもう。わたしが行ったときは、社長自らがサンダル履きで出てきて、ちょこちょこと焼いてくれた。事務所の隅の木の椅子に座って仕上がるのを待っていると、お茶を出してくれ、社長の趣味の無線の話などをした。

DTPの出現は、デザイナーにとっては夢のような技術だったが、それによって写植やさんは仕事がなくなった。安価でトラブルなしのTrueTypeの開発によって、DTPは格段に普及した。一方それはFont業者の過去の遺産をも徹底的につぶすものだった。

万人に対してシンプルな使いやすいものを提供するために、既存のものをすっぱり切り捨てる非情さ。美しさ・フレンドリーさと、非情さは表裏一体。伝説と便利さに魅せられてApple製品を購入することでその一部になったような幻想を見ることはできるが、向こうはこっちを仲間とは思っていない。という現実もあるとおもう。Appleの製品はすばらしい。けどそれを使わせてもらうだけでいいのか?

あとね、当時契約社員が正社員に昇格する最終試験は、自社製品について重役たちが居並ぶ前でプレゼンすることだった。役員になった人は、自社の社員によるプレゼンをすっごくたくさん見たんじゃない?

アメリカ人にしょっちゅう言われていたことそれは「〜〜するためには、〜〜するだけでいい」しんぷるいずべすとっちゅうことだけど、ランス・アームストロング(アメリカ人)がツール7連覇後にインタビューでそう応えていたときは「あーっまたか」とげんなりしたわ。

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本の内容とは関係なくなったけど、ちょうどこの本を読んでいたときジョブズが他界したので。