シークレット・レース ツール・ド・フランスの知られざる内幕

シークレット・レース (小学館文庫) [文庫] タイラー ハミルトン (著), ダニエル コイル (著), Tyler Hamilton (原著), Daniel Coyle (原著), 児島 修 (翻訳)

ショックやったわ。ランスはやってるかもと思ってましたよ(市川さんがJスポの解説中にそんなことほのめかしてたし。その後市川さんは解説陣から消えた。。。)それにしても、ここまでとは。タイラー・ハミルトンといえば、骨折しながら完走、1勝まで上げた驚異の精神力の持ち主。あの時みんな感動し賞賛した。ところがその時も、やってたんだよ!それに、あの選手もあの選手も。。。ヴィノ様まで。いやあああ。(>w<)

という時期からちょっと経って冷静になってきて思ったことをつらつら記録。

去年、ランスがアメリカのTVショーでドーピングを認める発言をした。というのをニュースで見た。だろうなとは思っていたものの、やっぱり本人の口からそう聞かされると、あーあという気持ちになったね。彼のチームのスポンサーだったUSポスタルとディスカバリーチャンネルは責任取って、ドーピングの最前線について科学的に詳しく解明する番組を作れ!と思っていた。

違法な手段を用いたというのもいやだが(だって私たちロードファンが、まわりの人からあんなインチキをマジになって見てるなんてアホじゃね?と思われるってことだよ)、また一方どういう手を用いているのかこっちにはわからないのが腹立たしいというのもある。

読んでてもう自虐的に膝打って笑ったのが、ランスの真のコーチはクリス・カーマイケルじゃなかったってこと。「ミラクル・トレーニング」に書いてたことはウソじゃないにしても、たいしたことじゃない?ハミルトンはフェラーリ医師から薬物投与や自己輸血もされたが、むしろ厳しく管理されていたのは体脂肪率らしい。そのダイエット方法や、その他様々なトレーニングのさじ加減が知りたい。きっとそれこそが企業秘密なんだろな。同時期にドーピングしていた、フエンテス医師組の有力選手たちは、フェラーリ医師が管理するランスたちに勝てなかったんだから。

私が勝手に今思うに、ランスにしてみれば、ヨーロッパの泥臭いやつらに、こっちは最新科学で戦いを挑むという気持ちもあったかもしれない(勝手な想像だが)。自転車競技が、他のスポーツリーグと肩を並べるようになりたい、自分は業界に貢献しているとも(あくまでも勝手な想像だが)。実際、UCIはアメリカの自転車ファンを増やすため、ランスのドーピングを黙認していたわけだし。となるとドーピング問題と言うよりは八百長問題か。

一方そのとき競技の本場のフランス人たちは、勝ちを外国人に奪われても「仕方ないよね、うちらはクリーンだから」と笑っていた。外国人には薬をやらせて、自国人はクリーンって、やっぱりツールはローマ時代の奴隷vs猛獣ショーか。「お・ま・え・ら〜」と言いたくなるが。。。

好きな自転車選手に、マヨという人がいた。彼はドーピング発覚後選手を辞め、今は長距離トラックの運転手をしているそうだ。いろんな選手や関係者がドーピングに手を出し、発覚後に謝罪してまた競技に戻っている。それでいいのか?それに、まだ摘発されていない選手の心の内はどんななんだろうか?

今さらだけど、日本人の若い選手が外国に出て行って、そこで現実を見て大変な目に合わないか。とても心配になる。わたしは3大ツールは観光番組としてたまに見るぐらいに戻ろうと思う。日本人選手も無理してツールに出なくていいよ。日本人選手は自分のためにがんばってください。どうか業界を背負わないで。わたしたちロードファンは勝手に応援するけど。

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ところで、この本を読んで思い出した。片岡義男が「日本語の外へ」という本で、アメリカ人の戦争に対する心理構造を説明するのに「job」と「home」という言葉を使っていた。この「シークレット・レース」という本も、「job」と「home」について書かれた本という感じがする。