平和のための戦争論_memo

以下メモ



・民主主義国家同士は今まで戦争をしたことがない→民主主義国家を増やせば平和になるという理屈byアメリカ

・米中関係を、世界史における覇権交代のパターンと見ることもできるが、今までと違う点は両者が核武装していていること。

ーーーーー

・日本を取り巻く安全保障環境は本当にきびしくなっているのか?ここで具体的な各国の装備が紹介される。

  北朝鮮=ミサイルしかない(それ以外の戦闘力はない)

  中国=海空軍のレベルは米中に比べると脅威ではないが、対艦弾道ミサイルに注目。アメリカの高価な空母が破壊されるおそれがあることが抑止になるか?

・集団的自衛権を行使する時:今まではアメリカからの要請に応えられないときは「できない」と断れたが、これからは「できるけど しない」と回答することになり、日米関係を強固にするという当初の目的に反する結果にならないか?

・冷戦時のソ連に匹敵するほどの脅威がある国があれば、アメリカは日本を守り続けるが、まだ中国は脅威には遠い。安全保障環境が本当に厳しければアメリカは日本を見捨てない。今は厳しくない。

・日本が感じている「中国の脅威」は国際的には共有されていない。アメリカも極東の安定を望んでいる。

・集団的自衛権を持つ理由は、紛争に巻き込まれることで味方を作ること。しかし国家相手にツケはきかない(あのとき助けてもらったから今度は・・・というの国際的にはない感覚)。

・日本は実力も実績もあるのに国際貢献度が評価されていないという不満が外務省にある(湾岸戦争のトラウマ)。

・諸外国と共同軍事訓練や演習に加われるようになりたいと防衛省は思っている。しかし海外には参戦すると言い、国内にはしないと言うダブルススタンダードは、不確実性を嫌う軍事の世界では信用されない。確実に参加するという保障がないと作戦に組み込まれにくい。平素から参加を前提に訓練しているという既成事実が、有事の際に政治決定を縛る可能性も。実際には参加しないのに参加するかのようにシグナルを送ると対抗措置を生み安全を損なう可能性も。

・湾岸戦争時にすでに日本が集団的自衛権を行使できていたら、日本の安全は、世界の安全保障環境がよくなったかを想像してみる。外交的にはプラスになったかもしれないが、日本の安全や中東情勢は変わっていただろうか?

ーーーーー

・戦争が起こる原因は勝敗予測の不一致(負けるとわかっていれば開戦しない)

 1勝敗予測のズレ

 2負けるという予測が受け入れられない場合(昭和16年の日本「日本人はなぜ戦争をしたかー昭和16年夏の敗戦」猪瀬直樹)

・勝敗予測のズレの種類

 1短期楽勝の誘惑

 2タイムセールの危険(遅れたら負けるという恐怖)

 3早い者勝ちの焦り(有利な奇襲攻撃のために手の内を相手に見せない=交渉が進まず不信感が募る)

ーーーーー

・戦争を抑止するには

 1懲罰的抑止(倍返しの予告)

 2拒否的抑止(攻撃しても無駄だと知らせる)

・抑止の効果の検証は困難。日本が戦後70年平和だったのは、

 1日米安全保障条約によるものか(集団的自衛権賛成派)

 2平和憲法によるものか(集団的自衛権反対派)

・抑止が成功する条件

 1相手の攻撃に報復または拒否する能力と意図があること

 2能力と意図があることを相手に正しく伝達できること

 3状況に対する認識を共有していること

・シグナルの信憑性

 1信頼(威嚇と安心供与の2つが必要)

 2コミュニケーション回路の確保(ホットライン・外交パイプ・防衛力の透明化・防衛交流による信頼)

 3野党やマスコミの声

 5観衆費用(指導者の言葉が実行されるか民衆がチェックすることで信憑性が増す。民主主義国家の方がシグナルの信憑性が高い→民主主義国家同士は戦争をしない理由)

・軍備増強も信憑性を増すが、二国間の関係が悪化する覚悟が必要

・冷戦後の核の傘(懲罰的抑止)

共通の敵がいなくなり日米それぞれの利益を優先するようになった。同盟をつなぎとめるため日本の負担が多くなった。日本の防衛協力の増加が核の傘を担保するのに十分か?日本が核攻撃を受けた場合、アメリカが核で反撃してくれるのか?アメリカの領土が核で反撃をされるリスクを冒して。圧倒的にアメリカ一国の核武装力が強大な環境では核抑止の信憑性がほころびつつある。

・米中の核武装力は、圧倒的にアメリカ有利。不均衡がかえって抑止力の低下になる可能性がある。

・通常兵器による抑止(拒否的抑止)

敵戦力の30%を撃破する能力があれば敵は作戦を断念する、防御側の3倍の戦力があれば攻撃側を突破できる、という通説が引き合いに出されるが、その後の研究では疑問が投げられている。

・小規模な侵害を抑止するのは難しい(南西諸島・尖閣諸島など)楽観的に攻撃を仕掛けられた場合は、相当の損害になると明示する必要が有る。



ーーー尖閣諸島をめぐる攻防の話

小規模の侵攻はかえって抑止が難しい。攻撃に対する反撃のリスクが想像されにくいため楽観的に行動を起こしがち。多大な損害があると相手に明示する必要がある。戦争は高くつくが抑止ならコストがかからないと思いがちだが、抑止側もいざとなれば戦争のコストを負うという態度を見せなければ、ハッタリと思われて抑止は成功しない。

離島への上陸・実行支配を妨げるには、補給を断つため制海権・制空権の確保が必要。

 ↓

制空に失敗した場合は、基地への攻撃になる。幅45mの滑走路を使用不能にするには1200発のミサイルが必要。基地だけでなく民間施設・民間人への被害は避けられない。人が住む地域・米軍基地への攻撃となる。

 ↓

戦闘が激化した場合、基地だけでなく都市の破壊にエスカレートする場合も。中国軍のミサイルは命中精度が低いため強力な火器が使用された場合被害が甚大になる。

 ↓

戦闘の激化を抑止するには、まだ温存している兵器の使用を諦めて、事態収拾のために相手に譲歩するという政策決定が必要になる。国内の有権者の反対に合うかもしれず、為政者には厳しい選択になる。

・尖閣諸島をめぐる争いは具体的に何を争っているのか?

日本も中国も世界における自国のイメージの転換期にある。日本は戦後の呪縛からの解放。中国は大国化。どちらも他国のいいなりにはなりたくないと思っている。太平洋進出をめぐる争い。中国の進出は国際法への挑戦と受け取られている。アメリカにとって高価な空母が破壊されるのは大きなリスク。日本が尖閣で守っているのは日米同盟の信頼性。尖閣で同盟が機能しなければ他所でも抑止力が低下する。

・抑止を高めるという観点からは、国民のナショナリズムの高揚は好都合だが、それに伴い譲歩・妥協ができにくくなるという、諸刃の剣。脅しが強固だと抑止になるが、対立も深まる。

・超えてはいけない一線の認識を共有すること。ハッタリと思われないために超えたら確実に武力行動することが戦争を抑止する。

・アメリカの曖昧戦略。アメリカが当事者として巻き込まれないため。また曖昧な態度をとることで双方を抑止する。アメリカは自国軍の行動の自由は主張するが、領地の領有をめぐっては介入しない。

ーーーーー

・「平時(警察権による警備)→グレーゾーン→有事(自衛権による自衛隊出動)」の切り替えが、素早く滞りなく実行されれば、持てる軍備力を十分に発揮出来る。しかし前倒しになると紛争が激化するとも予想される。外交ルートによる交渉で紛争の激化を抑え局地的な問題に留めるには、紛争のペースは遅い方が望ましい。

・軍事的な効率を優先させるあまり、外交がおいていかれる例は歴史上少なくない(例:長崎への原爆投下)

・自衛権の発動について事前に細かく取り決めておくという考え方と、状況に応じてその場で判断するという考え方がある。何を持って有事とするか、平時から決めておく必要がある。



・日本は例外なのか?

これまで日本の防衛政策の弱点は法制にあると議論されてきた。しかし2014年7月の閣議決定による武力攻撃にいたらない侵略にたいしても、武力を持って対応できるという見解は、国際法の個別的自衛権の範囲を広く解釈している。自衛隊が出動すれば自衛権に基づく行動と解釈される。自衛権に基づかない出動はかえって事態を混乱させる。自衛隊を早い段階から投入するより海上保安庁の能力を高めたほうが紛争の激化を防げるという意見もある。

手続きを迅速にする←→紛争が激化する

軍事的効率←→民主的手続き

相反する。

ーーーーー

・安全保障のジレンマ

あるA国が経済成長に応じて急速に軍事力を強めると、周辺国はそれに応じて軍備を強めたり周辺国と同盟を強化したりする。結果、A国はかえって軍事力が周りより下がってしまう。A国に侵略の意図がなくても、対立関係が生まれる。軍備の目的が攻撃か防御か区別がつきにくい場合悪化する。

・ジレンマ悪化の条件

 1攻撃優位(補給の関係上一般的に防御が優位だが、離島ではそうとも限らない)

 2攻撃と防御の区別がつきにくい(現代の兵器が攻防兼用なため)

 3地理的に地続き

 4既存の不信感がある(冷戦終了後共通の敵がいない)

・日米中のジレンマ

冷戦後、アメリカと日本の関係改善・維持、北朝鮮の脅威に対するため、日米同盟を強化した。それに脅威を感じた中国が自国をターゲットにしていると勘違いして軍備を増強。そんな中国に脅威を感じる日米&周辺国。タカ派:中国の軍備増強は日米関係に無縁←→ハト派:日米同盟強化が原因。

・日本が防衛力を強化する時、周りからどんな反応が起こるか認識しておくことが重要。国際関係は作用反作用で形成される。日本の政策が他国からどのように見え、どのような対抗措置を引き起こす可能性があるかわかっていなければならない。

・日中関係の場合、ジレンマ悪化の4条件のうち3つが当てはまる。

・歴史問題、人権問題、領土問題、台湾問題などが日米中の間にあるが、それが関係を悪化させているのではない。冷戦時代はこれらの問題は水面下に追いやられていた。

・安全保障ジレンマの緩和=一線を越えなければ攻撃されないという安心供与。

ーーーーー

・平和にとって大事なのは、平和なほうが得だという損得計算&平和が保たれるという安心感。それを人為的に作り出すには?

・戦争の機会費用(経済的損害)に貿易がある。第一次世界大戦時に相互に貿易依存していた国同士で開戦した例から、経済的な相互依存は戦争防止にならないという説がある。当時との相違点は、国際的な貿易協定があり安定的な経済関係が保障されている。長期の利益を認識できる。

・ムチ=抑止。アメ=宥和政策・リベラル抑止(著者の造語)。抑止だけではジレンマに陥る可能性。リベラリズムは国際機関の制度の確立を通じて敵対的な行動を抑制するという考え方。友好関係を維持する利益により平和維持へ力を動かす。リベラル派は軍事力による抑止は必要ないと思いがちだが、学生にとっての試験、政治家にとっての選挙のように軍事力による反撃は必要。

・アメとムチの両方を政策として実行するのは、複雑だし一見矛盾するようで国民に受け入れられるのが難しいが、平和と戦争の景色の違いを際立たせ抑止を実効的なものにする。

・制度化による平和

 経済や安全保障の取り決めを制度化し、違反のコスト(罰則)を高く設定しておく。協定の参加者が査察や罰則に十分な資源を投じる必要がある。

多くの国において、安全保障政策と経済政策の担当者は異なる。安全保障政策の担当者が、経済的なコスト・ビジネス上の損失に精通しているとは限らない。安全保障政策担当者が、戦争の機会費用を認識していることが判断に影響をおよぼす。

ーーーーー

日本が日米同盟に頼らず自前の軍備を持っていたら、周辺国に警戒され日本包囲網ができていただろ。太平洋戦争時の日本人自身による総括がないままなので、関連国と良好な関係を結ぶのも難しかっただろう。日本は専守防衛と日米同盟により、戦後70年間平和を享受してきた。

日米同盟の脆弱化の理由

1冷戦終了、日本の戦略的な重要性が下がった。

2アメリカが世界の紛争に介入する度合いが下がる。

3日本からの経済援助、市場、投資、技術力が低下。

4アメリカの弾薬庫である沖縄が中国からは近すぎる。

集団的自衛権のメリット

1日米同盟の強化

2アジアにおけるアメリカ軍の肩代わり

3共同演習による防衛交流

4武器供与、輸出に有利になる

5外交的関係強化

集団的自衛権の問題点

戦争を防ぐには、1戦争になった場合の損害と、2ならなかった場合の利益の、差を認識させる。1戦争による損害を想像させる(抑止)と、2共通利益の拡大。

1の抑止にも、認識の共有と信頼関係が必要。威嚇が本物であること、一線を越えなければ安心なこと。マイナスとプラスの両側面。

2014年04月 武器輸出三原則の緩和

2014年07月 集団的自衛権行使容認の閣議決定

2014年12月 特定秘密保護法施行

など、抑止のマイナス面の威嚇が強化されているが、同時に必要になるプラスの利益構築と安定供給が不足している。

これらの政策が実際に効果を発揮するには、プラスへの配慮が必要。中国との意思疎通の方法確立、信頼関係強化、安心供与のシステムなど。それが欠けている。



アジア各国は日本の集団的自衛権行使を支持している。その国は、それにより自国の利益が予想される国。しかし、そもそも集団的自衛権を含む安全保障政策の改定の目的は何か?それは集団的自衛権行使容認に懸念を表明する国との関係改善。

中国は日本に対して「中国の国家主権及び安全保障上の利益を損なわないよう要求する」と表明している。中国の懸念を念頭に置いて、日本の意図が誤解されないように、意思疎通を密にする必要がある。

アメリカが日本の集団的自衛権行使に期待するのは、韓国との関係強化、朝鮮半島の有事の際の日本の役割拡大だったが、当の韓国は中国とともに日本に対して懸念を表明するという皮肉な結果に。北朝鮮に対する抑止力強化になっていない。

安全保障上のことに精力を費やすなら、日米との関係強化だけでなく中国との関係強化が必要。日中関係への労力が少なすぎる。



日本の集団的自衛権行使を支持いている国の理由

アメリカとオーストラリアは東アジア安定のための自国の負担軽減を期待。

フィリピン、ベトナムは南シナ海の領有をめぐり中国の影響を懸念。日本とともに均衡を取りたい。

日中が対立してどちらか一方だけが主導権を持つことは望んでいない。



同盟国の期待にどれだけ応えられるのか?

アメリカ、オーストラリアの軍事負担を肩代わりすることが日本にとって国益になるか?協力しない場合、同盟の信憑性が下がり抑止力も落ちる。

フィリピン、ベトナムの期待は中国への対抗。日本の国益と一致しない場合は?協力を拒めば抑止力も下がる。

日本は南シナ海の紛争に関わるのか?日本の安全とアジア地域の安定のためにはどう行動するのか、検討しておく必要がある。

また対中国だけでなく、第3国との紛争で協力を求められることもある。その際その国との関係はどうなるか?グローバル化した世界では利害関係が複雑に絡んでいる。

安全保障では作用には反作用が伴う。

集団的自衛権行使についての日本の選択

1現状維持 

  安定が見込まれるが、地域において主導権を発揮する可能性は低下

2非軍事的国際主義 防衛政策は現状維持でODAを増やす

  安定している・世論の支持が得られやすいが、即効性がない・他国が安全を確保してくれた環境でしか活動できない。

3軍事的孤立主義 個別的自衛権の強化・他国には介入せず自国防衛は強化する

  自国の安全保障に専念でき不確実性が減るが、防衛費が増大する。日本の軍事能力増大によって生じる不信感の払拭に、歴史的な総括・和解が欠かせない。政治的なエネルギーが必要。

4積極的軍事的国際主義 集団安全保障確立をめざし、国連安保理決議の下で活動

  国際安全保障の改善に貢献することが結果的に日本の安全保障になる。集団安全保障が確立するまで不確実性が大きく、戦費がかかる。各国の利害の不一致から当面は期待できない。国連安保理常任理事国が持っている拒否権を日本は有していない。

5消極的(限定的)軍事的国際主義 4に近いが、軍事力の行使は限定する。

  国際的には民族浄化など正義が著しく犯されている場合など。日本の防衛は日米同盟を堅持し死活的な国益が侵害された場合のみ軍事力を使う。4よりは防衛費が少ないものの、以前よりは増大する。軍事力の行使が増えるので周辺国の理解を得るため外交努力が必要になる。日本の世論が他国の不正や攻撃に関心をいだけるか?抱けないと孤立主義的安全保障政策を脱することはできない。

ーーーーー

著者の考え

世界に起こっている変化を見ると日本がこれまでの安全保障政策で安全を確保するのは難しい。国連の下での国際協力活動に取り組む必要があると考える。(国連の活動なら集団的自衛権の対象外という意見もある)

集団的自衛権行使に向かう場合に不可欠なこと

1どのような場合に集団的自衛権を行使するか国内で議論が必要

  どのような場合に行使するのか明確でないと抑止は成功しにくい。国民だけでなく潜在的な攻撃国に対して明らかでないと安全保障のジレンマに陥り安全が損なわれる。民主主義の長所である国民による透明な議論が、攻撃国へのシグナルになり抑止になる。

集団的自衛権行使容認について、政府がどのような安全保障政策を目指しているのか国民への説明がない。日本を守るためなのか、国際貢献(日本を含む)のためなのか。尖閣諸島の問題は国民に政策や武器を売り込む際説明しやすいが、中国に誤ったシグナルを送り、日本国民にも誤ったメッセージを送る。尖閣の問題は不測の事態から戦争に激化する可能性があり細心の注意が必要。日本政府は尖閣諸島問題を脅威と位置づけながら、実は軽んじている。

2中国との関係改善・強化に全力を傾けるべき

  失うものが大きい関係を築くことが必要。外交だけでなく、アジアにおける多国間の安全保障制度の確立を目指す。多国間安全保障の枠組みを作りそこに中国を組み入れる。2010年までは議論があったが、最近は経済でも対立する形のグループ作りが目立つ。力の抑止と同じく、対立だけでなく懐柔して社会化することが必要。

冷戦の時代のような依存関係がない。国際テロ、北朝鮮問題も共通利益とはいえなくなっている。人為的に依存関係を作るのは容易ではないが、災害救助の協力などできる分野から取り組むべき。

中国は実際の戦闘部隊の軍人が外国の軍関係者と交わる機会が少ない。中国が参加する共通の任務の活動により、実践の場で交流を深める必要。誤認を減らし共通認識を醸成することが重要。

3日本人による先の戦争の検証

  過去の戦争の原因について検証し総括しなければ、次の戦争の判断もできない。戦争に対する日本政府の政策が不明瞭。謝罪や釈明を意識せずに事実はどうだったかを検証してはどうか。個人の資質に落とし込むのではなく、国家や社会のしくみとして検証する必要。正しい状況分析・正しい選択をするには、どのような国家・社会のしくみを確立する必要があるのか。

海外の安全保障専門家の間では尖閣はサラエボなのか?という問いかけがなされている。戦争は思い違いや後から見ると考えられないような誤認を基に起こっている。日本の中で戦争に対する畏怖が薄れてきていないか?先の戦争当時の日本人には戦争を選ぶ権利も責任もなかったが、今の私たちにはある。

ーーーーー

著者のあとがき

国際政治には作用・反作用がある。自分の視点からは理にかなったことでも全体で見ると安全を損なうことがある。その危険を感じたのでこの本を書いた。

戦争を体験した世代は自分たちの人生が仲間の犠牲の上にあるという実感と責任感があった。保守ではあっても戦争の怖ろしさを知っていた世代の政治家は、安全保障についてはリベラルな面を多く持ち、集団的自衛権については慎重だった。安部首相には戦争への畏れが感じられないのが不安。

集団的自衛権行使が認められたからといって、すぐに徴兵制が始まったり戦争になったりするわけではないが、これまで多くの戦争がしようと思って起こったわけではないことを忘れてはならない。

私たちが世界で起きていることに関心を持ち、日本が取るべき行動を考え議論することが大切。日本が何を考えているのか外の国からわかりやすくなるだけでも平和を守る可能性が高くなる。