大叔母の他界

97歳の大叔母(シスターT)が身罷った。大叔母は若い頃に誓願をたてて入信した。日仏バイリンガル。カナダで教育事業の経験を積み帰国、修道会の日本支部を立ち上げ、カトリック幼稚園の経営に携わり長年園長を勤めた。退職後は修道会で身寄りのない難民の子供たちを受け入れ養育するプロジェクトを実施。子供たちが成人して自立するまで育て上げた。晩年はケガや病気の試練と戦い何度も死の淵より復活した。宗教者というよりは経営者、戦う修道女のイメージだった。自分が苦しい時もキリッとした明るい声で励ましてくれた。我が一族の良心の番人。祖父の兄妹の最後の一人。身内としては、肉親でありながら、修道会という秘密結社のような得体の知れない組織の中に居てコンタクトを取りにくい面もあった。シスターたちには労働の対価を受け取るという概念はなく、私有財産を持たず、定年もない。入信した時より一生を神に捧げる誓いを立てているので、親族のお墓にも入らない。大叔母が入信するとき、私の祖母が「いつでも帰ってきてと言ってくれた」そうだが(祖母は積極的無神論者)結局大叔母が俗世に戻ることはなかった。大叔母とは子供の頃は時々会っていたし、この30年ほどは電話や手紙のやり取りをしていた。一昨年は死期が近いと訴える大叔母に、両親と妹と会いに行った。大叔母との別れが近づいているとは分かっていた。それは大叔母にとっては老いの苦しみから解放され魂が救われることだとも分かっていた。その時は静かに訪れて、笑顔で受け止められると思っていた。なのにやっぱり悲しいのはどういうわけなんだろうか?花粉症でアルコールを断っていたけど、冷蔵庫の料理用のワインを飲んでしまった。妹にはお祈りしようと言っておきながら、お姉ちゃんは実は酔っ払ってます。

*このblogに出てくる私の大叔母は二人いて、どちらもカトリック信者でまぎらわしいので、イニシャルを付けました