ギリシャ、ヨルダンのあと、クウェートに回り、イラクへ

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石川さんのメールの後半です。


ついでにいちばん最近見てきたあたりのこと。
実はギリシャからイラクチームと一緒にバクダッド入りして、事前調査やキャンペーンのための取材をするつもりでしたが、イタリア人の記者が殺され、フランスの記者も解放されないという状態で、通訳だ、車だ、護衛だという面倒をイラク協会にお願いできる情勢ではなくアンマンでイラクチームが出てくるのを待つということになりました。
(続く・・・)


(続き・・・)
ギリシャで4試合、イラクチームと帯同して、あとの3試合(オーストラリア戦、パラグアイ戦、イタリア戦)、日本がやった相手でしたので、相手チームのゲームレポートを頼まれ、試合前日にはいつもイラクの監督やコーチと一緒に対策を考えるという変な取材でした。U-23という若いチームですので、チームが1試合毎に成長していく過程を見せてもらえたのが収穫でした。
ヨルダンのあと、クウェートに回り、イラクへの物流を見てきました。
クウェートから砂漠を120kmほど入ったイラク国境まで行きました。気温48度。車の外に出ると、サウナ状態です。
海岸付近には原油積み出し施設や精油所らしきものもありましたが、たまにラクダやヒツジがいる程度で、なにもありません。あるのは送電線と地下の原油のみ。
その道路を、発電機だ、巨大なウォーター・タンクだ、プレハブ事務所だ、軍用車両だといったイラク向け物資を山と積んだトレーラーが走ります。
今回の戦争の本質は、米英によるイラク原油の再分配にあるとあらためて感ぜざるをえませんでした。
クェートには、米軍、米民間企業、元傭兵部隊の連中がやっているセキュリティー会社のスタッフなど、次々に休暇や連絡で戻ってきています。

かれらの話。
ハリバートンから電力プラントの再開事業を受託した米電力会社のエンジニアの話。
「この半年でうちのスタッフは33人死亡。うち17人が米国人。日本の東芝や日立のタービンも到着したけど、日本人は来ないからね。
まあ、いいビジネスさ。われわれが指導して、イラク人技術者が仕事をやる。われわれのベースキャンプは砂漠のなかにあって、それを元サダムの軍人たちがやっている警備会社が警備している。移動の際は、そのキャンプから米軍キャンプまでコンボイを組んで走り、米軍キャンプからは軍のフライトで出てくるんだ」

元南アフリカ兵たちのセキュリティー会社の連中。
「南アフリカでもどこでも軍隊経験があれば、うちの会社は大歓迎さ。ギャラは1日100ドルがガキの仕事で、最高が1日1000ドル。
だいたい500から700ドルくらいだよ。3週間、休みをとったら、また戻ってくるさ。
こんなにかせげる場所はないからさ」

パキスタンの運転手たち。
「クウェートでタクシーの運転手をやっていても、月250KD(800ドルくらい)の稼ぎだろ。イラク行きのトレーラーに乗れば、550KD(1800ドルくらい)にはなるからな。パキスタニも2人、のどを掻き切られたけど、そいつは運が悪かったのさ。半年稼いでペシャワールに戻るんだ」
ハイリスク・ハイリターン、「自己責任」があたりまえのビジネスの世界がこの戦争を支えています。
ぼくが会ったすべての人間が、「この戦争」といいます。主権委譲が行われたかどうかなどは別のこととして、いまもイラクは戦争継続中です。武装解除できなかった勝利というのも変ですね。そういう変な戦争に日本も巻き込まれているわけです。
そんなわけで、ヨルダンもクウェートもイラク特需で景気がいい。
10月はオマーンでのW杯1次予選(対オマーン戦)、月末はWシリーズから翌週の大統領選にかけてはアメリカに出かける予定です。
今年の遠征はそれで打ち止めのつもりでいますが。
まさか、1次予選まで出かけることになるとは思っていなかったのだけど、負けたら終わりだしね。困ったものです。

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'TRA'  石川 保昌

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