日本人の性格構造とプロパガンダ

日本人の性格構造とプロパガンダ ジェフリー ゴーラー (著), Geoffrey Gorer (原著), 福井 七子 (翻訳)

原発問題の本を読み漁っているうち芋づる式にたどりついた日米安全保障問題。

太平洋戦争時、アメリカの戦時情報局は、終戦後の日本の占領統治をどのようにすべきか文化人類学者などを集めて研究していた。当時ほとんど欧米人に理解されていなかった日本人の性格構造を体系化し、日本の統治を最小限のリスクと労力で行うために。

その際、占領政策に多大な影響を与えたと思われるレポートが時代を経て閲覧できるようになり翻訳されたのが「日本人の行動パターン」。(レポートの著者はのちにアメリカ国民向けに「菊と刀」を出版した)

(ちなみに、レポートの著者の意図は、日本をうまく治めてやろうというよりは、日本とアメリカ、互いに異なる文化の理解により無駄な血を流さずに平和に戦いを終結させることだった。そのために、まずはアメリカ国内の人種差別主義者たちと戦わなくてはならなかった)

その自分の記事を最近読んでいて、関連書籍で出てきた「日本人の性格構造とプロパガンダ」。「日本人の行動パターン」の福井七子さんによってその後書かれた本ということで、読んでみました。

日本人の行動パターン」の著者ルース・ベネディクトが参考にしていたと言われるジェフリー・ゴーラー著「日本人の性格構造とプロパガンダ」。「日本人の行動パターン」を読んだ時も衝撃だったが、これはもっときつい。なぜなら戦前に書かれたこのレポートにある、日本人向けのプロパガンダはこうすべしという提案が、そのまま今もまんまと使われてないか?ガーンとなるので。

ただ、日本人であるわたし自身にもなぜだかわからない日本における不思議なオキテの正体が解き明かされていて興味深い。中学生になって、何気なく使っている日本語に文法というものが存在し、実は細かい法則にのっとって運用されていると知ったときの感慨深さに似ている。

この本を読んだ後の感想は、「いまでも占領は続いている」です。正確に言うと、自ら進んで占領され続けているというか。。。

このごろ話題になっている安全保障関連法案とは、わたしにとっては「そこまでアメリカの犬になり下がるのか?」ということなのだけど、逆にこの改正によって「犬でなくなる」と勘違いしてるんじゃないかと思う人たちもいる。

とても不思議だ。つい10年ほど前、大義なきイラク戦争で無実の人たちが大勢死んだのに。それにわたしの税金も使われていたのに。当時はそれでも9条があるから実際には手は出せませんと言い逃れることができたのに。それさえ進んで手放すとは。。。

安全保障ムラは(原子力ムラと同様に)かつてはうまく回っていた。けど環境の変化によってシステムも変化を求められている。なのに今回の改定はむしろ逆に今まで通りの路線を不必要なまでに強化する方向だと思う。

さまざまな言葉がネットを飛び交う。そのサンプルを拾い集めて眺めてみると、ジェフリー・ゴーラーが書いている日本人の性格構造にぴったり合うことに気がつく。なんと皮肉な。

このことを、黙っていられなくて家族に話した。家人は今の日本を「高度経済成長期とバブルとを経て、昔買った家電品がそろそろ全部寿命が来て買い替え時期にきてる状態」と一言で言い表した。そうだね、それだ!そして今朝、内田樹のblogをシェアしていた。

対米従属を通じて「戦争ができる国」へ。 (内田樹の研究室)

わたしもそう思う!!と彼に告げると「りっちゃんが昨日言おうとしていたことは、こういうことじゃないかと思ってね」と苦笑いした。

原発問題と同じく、ご家庭で意見が対立してるんだろうか?あの河野太郎の家でも「あなた、原発問題はどうなってるの?子供の安全がかかっているのよ!」と奥様に言われていたそうだ(河野太郎の国会報告会で本人が語るのを聞いた)。

なんかまた原発と同じ構造だな。「こわい・あぶない」vs「そうは言ってもエネルギーどうするの?」(21日に発行された今年の防衛白書によると、防衛が必要なのは国民の命ではなくて、東シナ海の資源らしい)水掛け論でどこまでも平行線。。。「命が大事」といえば言うほど「だから守らなくちゃダメでしょ」と堂々巡りになる。「こわい危ない」と騒ぐほど核の抑止力が発揮されるという矛盾に似ている。電力問題における送電分離みたいなオルタナティブな案が出てこないとダメだろうな。

(ゴーラーもベネディクトも「日本人は民主主義の基本である個人の幸福などは見下していて、死ぬことなどなんとも思っていない」と分析している)

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本の内容についてはこれから書き足していきます。

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内田樹の安倍首相批判をリンクしたので、反対に賛賞するリンクも貼っておきます。

中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス 習近平は尖閣諸島を奪うつもりだった 対日強硬路線変化の背景:日経ビジネスオンライン

元産経新聞記者、中国ウォッチャー福島香織さんの記事。中国から日本人の知らない中国事情を面白おかしく伝えてくれています。これは論評ではなく、ゴシップ=週刊誌に載る類の話というのを肝に命じていないと、あとで恥をかくことになりますが、法案賛成派の他の言い分よりずっといい!そしてこれを読んで思うのは、中国は余裕なんだなということ。アメリカの意思=日本の意思なので、兵士がアメリカ人だろうが日本人だろうが変わりなし。今まで通りだねってことですかね。そして日本が切羽詰まって必死な役回りなのも浮き彫りになっている。

この記事は福島さんの新刊の宣伝も兼ねています。福島さんの他の記事も非常に面白い。ぜひ読んでください。ひー中国も大変なんだなーって思います。どうせ付き合うなら今のところはまだ中国よりアメリカの方がマシと言えるかもしれない。