をWOWOWの放送で見た。それから5ヶ月。ずっとこの写真家のことを考えていた。 一体なんて人なんだと。
James Nachtwey
TIME.com: The Palestinians by James Nachtwey
TIME Photo Essay: One Life At A Time
Shattered 9/11/2001
James Nachtwey by Peter Howe - The Digital Journalist
母親が泣いている。女達が集まってなぐさめている。男達は母親の息子を掘り出そうとしている。埋葬するために。手にシャベルを持ち、輪になって土の中を見ている。誰もしゃべらない。そこへナクトがウェイがやって来て写真を撮る。遠くから来た報道写真家には見えない。すでにそこにいる人たちの一員で、みなに呼ばれて来たようだ。ああ司祭さんが来た、お願いしますと言われているよう。予定されていた儀式通りに祈りを捧げるようにナクトウェイは静かに淡々とシャッターを押す。
このドキュメンタリーは彼の映像と、彼について語った人たちの証言で構成されている。ナクトウェイは寡黙な人だ。彼自身が語る言葉は少ない。その一つに「相手を警戒させないためには、大声を出したり急に動いたりしないことが大事だ」というのがあった。
彼はどんな死に近い状況でも取り乱さない。他の戦場カメラマンが悲惨なシーンを忘れるために酒の力を借りる時も、彼は「明日早いから寝る」と一人先に休む。
彼は「自分は不幸な人たちを題材に仕事をしているので、自分だけ幸せになることは出来ない」と、普通の幸福に背を向け家族も持たず一人で暮らしている。
彼の撮る写真は悲しいシーンではあるけれど、ぞっとするほど美しくもある。1枚の写真から物語が流れ出る。まるで宗教画のようだ。
彼が自身の回顧展のため、フィルムを紙焼しているシーンがあった。
その表情を見て私は納得した。この人は楽しんでいる。完璧な写真を作るのを。
ニューヨークタイムスのサイトでイラクから送られてきた写真を見た。他のフォトグラファーの写真とは明らかに違う。彼の写真は兵士の写真などではなく、家族を失って泣いている普通の人の写真だった。怒りや悲惨さを写しているはずなのに、美しいシーンだった。全身を布で包まれた青年や子どもを、母親はどんなに愛していたか。父親はどんなに自慢にしていたことか。幸せだった頃の家族が想像される。
ドキュメンタリーにインドで線路で暮らしている一家が出てくる。父親は片手、片足がない。けど妻と子がいて、父親は物ごいで生計を立て、子どもの面倒をみてやっている。
その写真を見た米国に住む貧しい人から手紙が来る。その人のとても少ない週給から数ドルを毎週その父親に送ることにしたと。ナクトウェイはその手紙を読んでいる。。。
究極の愛の収集家。
ナクトウェイとは、なんとどん欲な人だろう。
その彼が日本に来る。
To The Human Future - Flight From The Dark Side (Japanese) / Contemporary Art Center, ATM
水戸は遠い。私は相当迷って行かないことにした。
戦場のフォトグラファーのナクトウェイ氏とのティーチ・インを読んで、彼の答えの用意周到さに、これは手ごわいと思ったから。彼は初対面の人たちに自らを語るような人ではない。この人を知るには彼の写真を見るしかないのだと。
(でもどなたか行ったら、どうだったか教えてください。ほんとは行きたいの。)
アズサ
今日ナクトウェイさんの講演会に行ってきました。私も3週間ほど前に水戸芸術館で「戦場のフォトグラファー」の上映を観ていたので、ナクトウェイさんはストイックで近寄りがたい方なのかなぁと思っていましたが、気軽に質問に答えてくれたりすごく優しい方でした。
講演が終わった頃、すでに終了予定時間を過ぎていたので、全員の前で質問できた方は2名だけだったのですが、講演が終わった後にナクトウェイさんの周りに1人ずつ並んで質問をしたり、握手をしたり、サインをもらったりしていました。たしかにストイックな雰囲気があって、独特のオーラはありましたが、1人1人の質問に丁寧に答えてくださる、素敵な方でしたよ☆
こういう方にはこれからもいい写真を撮り続けていただきたいものですね。
り
アズサさん、はじめまして。
講演会がどうだったか教えて下さってありがとうございます!
本当に書き込んでくださる方がいたことに驚いて感動しています。
ナクトウェイさんはやはりナイスな方だったんですね。
ああ、やっぱり行けばよかったです。