ああ、おもしろかった!私はさきに「ゴシップ的日本語論」を読んでゐて、その最後
「どこかエロな所はないかと探しながら小説を読むのでいいんだ」
みたいな(詳細は忘れた)文が気に入っていました。この本「輝く日の宮」は全編エロです。
その上、ハーレクインロマンス風あり、チャンバラものあり、怪談あり、小津映画風あり、文学の楽しみの「物尽くし」にもなっています。説明が面倒くさそうな源氏の解釈については、女流研究者同士が壇上で対決というコメディの戯曲風に仕立ててあって、読者を退屈させません。松尾スズキにお芝居にしてもらいたい。紫式部と道長の部分は花組芝居がいいな。ちょっとキモイ感じがちょうどいい。
主人公の恋の行方はどうなるのか?意外なライバルが現われたりして、ありゃーますますややこしくなってきたよ。と思っていると、最後の章は。。。最初の1行を読んで、この章は作者からの贈り物だと瞬間わかって、感動でちょっと涙ぐんでしまいました。ほんと期待を裏切らない。至れり尽くせり。
そしてすべては語らず1番おいしい所は読者にまかせています。ここまで来たら、もう安佐子と紫式部の生霊が読者に乗り移っているので、その続きを想像するのは難しくないでしょう。てゆうか、気がつかないうちにすでに作者が全部説明してくれているんです。こっちが自分で想像したと勘違いできるぐらいに。まったく町山智浩さんかと思っちゃう。
ゴシップ的日本語論は、泉鏡花の解釈とか、柳田国夫と折口信夫の業績とか、源氏物語をめぐる瀬戸内寂聴との対談などが載っていて、ある意味「輝く日の宮」の解説書ともいえると思います。