鯨と原子炉

鯨と原子炉―技術の限界を求めて [単行本] ラングドン ウィナー (著), Langdon Winner (原著), 吉岡 斉 (翻訳), 若松 征男 (翻訳)

吉岡斉 翻訳ということで読み始めたが、著者は何が言いたいのかいまいちよくわからない。あきらめたところで、ふと巻末の訳者あとがきを読んで、本書の内容を知った。

エイモリー・ロビンス提唱「ソフト・エネルギー・パス」とは
1.小規模分散型エネルギー供給
2.需要の質に見合った種類のエネルギー供給
3.徹底的なエネルギー利用効率の向上
の3つの原則を徹底させることにより、便益を減らすことなしに一次エネルギー消費大幅に削減する路線。将来的には再生可能エネルギーだけで、すべてのエネルギー供給を賄うことを目指す。この路線にとって原発は好ましくないもので、廃止すべき。

感情やイデオロギーを振りかざす「反原発」に対して、合理的で経済効率でも優れているという主張の「脱原発」に近い考え方かな。

それを著者はまっこう批判しているというのだ。どっちかというと過去に存在した「反原発」派の主張に近い。

「効率という考え方は広く人々の同意を獲得しているので、それはときどき、もっと挑戦的な政治的争点をこっそり持ち込もうと考える人々によって、概念的なトロイの木馬として用いられる。」

(ちょっとわかんなくなってきた)

このくだりを読んで、訳者はギクリとさせられた。というのは訳者自身が、「現在日本で行われている原子力政策論争において、ロビンスと同様の「カウンター・テクノクラート」ーーテクノクラート的な論法を用いて、政府の従来の誤りを立証し、それと異なる政策の採用を提唱するものーーの立場をとっているからである

訳者、吉岡斉いわく。日本の原子力政策は、公共利益の観点から論理的・実証的に堅実な手続きによって策定された試しがない。むしろ原発利権を有するインサイダー集団、文部科学省、経産省、電力業界、原子力メーカー、原子力学会関係者などの利害調整の結果として、政策が決定されてきた。関係省庁や業界の利益にはかなっていても公共利益の観点からは落第点。とくにプルトニウム利用に関する政策は、合理主義的な論理によっては弁護不可。

そのため原子力分野の政府審議会報告書は、論理的・実証的に堅実なものでなく、ファジーな論理を多用して無理やり、インサイダーにとって都合のよい結論を導くものとなるのが常。日本ではたいていの政策領域について、同じことが言える。テクノクラート的合理主義に基づく論議によって、ファジーな議論を論破することは、さほど困難なことではない。

だが、こうしたテクノクラート的合理主義が、万能でないことは明らかである。一般的にいって民主主義の方が、合理主義よりも上位に置かれるべき価値基準であり、民主主義と合理主義の双方とも満足できるような合意形成には、唯一の正解というものはなく、最適の解答が時代と場所によって、微妙に異なると考えられるからである。

政策決定に関与する者は、この問題に無神経であってはならない。一人ひとりの市民も、社会の主権者である以上、無神経であってはならない。しかし少なくとも、政府に任命された委員会のメンバーが公共利益の観点から最善の政策を提案するという方式を採用した場合は、合理主義的なルールに則ることが妥当。それが責任ある態度。

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ううむ、著者であるウィナーには悪いけど、わたしもやっぱりテクノクラート派ですね。冷たいように思われるかもしれないが。だってイデオロギー、人種、宗教、文化の相違による争いは泥沼になる。もともとすべての人に共通するものではないのだし。

ある社会の構成員全員、または通信や交通の発達によってますます狭くなる地球の構成員にとって、共通する真実は、技術的な合理性と経済性だとおもう。

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脱原発の国:ドイツ、イタリア
原発大国:フランス

で、思い出すのがエマニュアル・トッドの「世界像革命--家族人類学の挑戦

長兄が家督を継ぎ他の兄弟たちとは差別される家族制度と、兄弟全員が平等に扱われ等分に相続する家族制度。育った家庭環境が、元々人間とは平等な存在か、不平等なものなのか、後の社会観を決定するという。。。(あるものはコミュニストに、あるものはファシストに)

さて、日本は。。。? 原発の運用をしている側の人たちは、自分たちが利益を受けるのは当然、それで他人が迷惑を被っても仕方ない。という立場にあるように見える。東電や保安院の対応を見ていると。原発の技術はどうかわからないが、運用する人があれじゃあいやだな。日本は温暖化に比例してだんだんラテン化している(笑)とわたしは思っている。

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今日聞いてて笑った、そして大手メディアにも良心があるのかと胸をなで下ろした番組。
Dig | TBS RADIO 954kHz 6月27日(月)「なぜ菅総理じゃダメなのか?」