津波と原発

津波と原発 [単行本] 佐野 眞一 (著)

「「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか」と同じく、地方からの視点で取材したルポ。津波と原発で避難している人々、原発で働く作業員など、現地に訪ねて取材した話。家族や土地の歴史、どのように原発が入ってきて暮らしが変わったか、原発の前にあった別の大資本による事業、災害・飢饉・中央資本に翻弄されながら、たくましく生きてきた人々の話。(新宿2丁目でバーを経営していた人の節税術には、そんな手を!と舌を巻いた。)

p175
日本に原発を根づかせた正力松太郎について。彼自身は原発についての科学的知識は全くなかった。正力が興味があったのは、大衆が好むもの=野球・テレビ。原発もその一つ。わたしたちは今も彼の作ったシステムの上で、テレビで野球を見、新聞で結果を確認するという安穏とした日々を送っている。その暮らしは正力が導入した原発から送られた電気でまかなわれている。今回の事故はそのような正力の巨大なてのひらから脱することができるかどうかの試金石。

著者は「「フクシマ」論」の開沼博にも会って取材をしている。「「フクシマ」論」は大変興味深く、貴重な著書だと思うけど、元々が論文なので、取っつきにくいところがある。重くて持ち運びにくいし。時間がない人にはこちらの「津波と原発」をオススメ。