8 29, 2011

隠される原子力・核の真実

隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ [単行本] 小出 裕章 (著)

2010年12月刊行。
「放射能汚染の現実を越えて」と同じく過去の講演会の収録。話し言葉だけにわかりやすく心に響く。

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日本では原発の廃棄物は再処理工場に運ばれ、地元に残ることはないと説明されてきた。しかし再処理工場の稼働の実現が疑問視される今、特にプルサーマル燃料の再処理工場はさらに不可能のような見通しの中、現実には核廃棄物は原発の敷地内に貯めていくしかない。(この本の刊行後起こった福島の事故で、その事実が明らかになった。)

著者はそのこと自体には反対ではない。なぜなら、原発を誘致するなら、やっかいなゴミはどこかに行ってくれると思うこと自体が誤り。原発を受け入れるなら、永遠の毒物をも含めて受け入れる覚悟が必要。

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「11章 再処理工場が抱える膨大な危険」より

「十分な希釈・拡散」とは広範囲に汚染を広げること
六カ所再処理工場は、クリプトン、炭素、トリチウムの全量を環境に捨てる。経済的な理由を惜しんで本来為すべき処置を取らないのは故意の犯罪。

チェルノブイリ事故時、日本は汚染食品の輸入制限をした。しかし汚染食品そのものが無くなったわけではない。それらは、原子力からは何も恩恵を受けない貧しい国の人々に押しつけられた。

六カ所再処理工場が動けば、放射性物質が放出される。周辺の環境・食品が汚染される。汚染食品を消費者が拒否すれば、生産者は破綻。それを回避するには再処理工場の稼働を許さないこと。

もし稼働を止められなかった時、汚染食品とどう向き合うか?一人ひとりの生き方の根本が問われるだろう。(福島の事故が起きてしまった今、まさに個人個人のスタンスが問われている。)

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「12章エネルギーと不公平社会」より

エネルギーと寿命
1890年〜2006年までの日本におけるエネルギー消費量と寿命の相関を表すグラフによると、エネルギーが絶対的に不足していた時期1947年あたりまでは平均寿命40歳ぐらい、長生きできない。エネルギー消費量がわずかに増加した時期1962年頃までは、寿命が飛躍的に伸びた。その後、エネルギー消費量は2006年に1962年の3倍以上になったが、寿命は延びていない。つまり今の日本では、生きるためでなく贅沢をするためにエネルギーが使われている。

エネルギー消費の格差
世界の人口をエネルギー消費量によって4つのグループに分けると

        人口    エネルギー消費量
    先進国:16億人 :68%
  開発途上国:16億人 :17%
   第三世界:16億人 :10%
極貧の第三世界:16億人 : 5%

生命維持に関係ない、単に贅沢をするためだけに、一部の人だけが膨大なエネルギーを浪費している。特に日本におけるエネルギー消費の拡大は異常。このスピードでエネルギー消費を続けると、そのような環境で生きることが難しくなる。

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原発は小回りのきかない発電方法で、季節時間に関係なく通年需要用の一部にしかならない。原発に石油の代わりができるのは、エネルギー消費量の1割のみ。

家庭用電力は、エネルギー消費全体の13%でしかない。家庭で節電しても効果は少ない。一方、個人が浪費を押さえれば産業界のエネルギー消費が減り、家庭以外の電飾消費が節約される。

個人のエネルギー消費を問題にする以上に、エネルギーを膨大に使ってしか成立しない社会構造、産業のあり方の変革が必要。エネルギー中毒社会から抜け出すために、自分でできる方法を見つけること。自分がどのような未来を選択するかに関わる。

代替エネルギーを探すなどという生ぬるいことを考える前に、まずはエネルギー消費の抑制に目を向けなければならない。


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小出裕章さんは、エレベーター・エスカレーター・クーラー・テレビは絶対使用しないことを自らに課しているそうです。先日ラジオに出演されたときも、9時就寝と決めているので、特別に録音での出演だった。番組のアシスタントの女性アナウンサーは、この著書の最後の章を読んで涙が出たと言っていた。それを聞いて、わたしもこの本を読もうと思ったのです。

昨日、そのアナウンサーさんは、別の放送で「汚染食品や海水浴を怖がるのと、原発を容認することが別々に考えられている。それらは直結しているはずだ。汚染食品を怖いとおもうなら、原発も容認すべきでない。」とビシっと言っていました。「個人的には」というレベルではなく、公人として仕事の場でも言う勇気ある人だ、小出さんのメッセージはこの人の心に届いたのだなあ、魂があるってこういうことか。


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汚染食品とどう向き合うか?あなたはどうしていますか?今まで原発は安全とだまされていた、こちらに責任はないから断固拒否する、ですか?わたしは原発は危険だと実は知っていました。原子力資料情報室のメルマガを取っていたし、広瀬隆の「危険な話」も読んでいました。ただ、どこか遠くの国の出来事のように思っていた。今回の事故後も、うちには子どもがいないから、我々自身はもういいな、ぐらいの気持ちだった。つい先日「放射能汚染の現実を超えて」で、先進国が拒否した汚染食品が弱者である第三世界に押しつけられるのは不公正というのを読んで、申し訳なかったと思ったけど、まだまだだった。今朝、この記事を読むまでは。

東日本大震災:汚染牛問題 給食の牛肉使用、茅ケ崎市の小学校が見合わせ /神奈川 - 毎日jp(毎日新聞)

弱者とは、自分が住む街の小学校の給食だった!

これはかなりショックだった。記事を見るうち、タイトルの上に「ツイートする」20というのがあって、これはこの記事を引用してtweetした人が20人いるという意味。20をクリックしてみると、その内容がtwitterのタイムライン上に出てきた。そのうち単なる引用ではなくて、自分の言葉を書き添えてあるtweetを見ると、茅ヶ崎在住の人だった。その人のblogからリンクをたどると
【放射線防護】 7.21 茅ヶ崎市長との面談記録:オリーブの林をぬけて。:So-netブログ

珍しく茅ヶ崎市が本気出してるとおもったら、このお母さんたちのおかげでした。
保育園給食に使用する食材について|茅ヶ崎市公式ホームページ

毎日の記事にあった「服部信明市長は「牛肉の生産、流通関係者に配慮したい思いはある。しかし子供たちの保護者の関心も高いので、食を提供している市として食の安全に万全を期したい」と説明した。」とはこのことか(市長の仕事とは各方面からの圧力を調整することだけなのか?その根幹に哲学や将来への展望はないのか?)。で、茅ヶ崎市が拒否した牛肉はどこへ?


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メモ:江守正多『地球温暖化の予測は「正しい」か?不確かな未来に科学が挑む』2008


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今まで読んだ原発関係の本で、これは参考になったと思う本を、リストにしてみました。
荒波を前にして足がすくんで震えている小さなわたしのお守り - これからの世界を決めるガイドブック

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