第2章、分解して分かるアップルデザインの真髄に、ふむーと思った。わたしが最初に働いた会社は、工業製品の金型の設計デザインをやっていた。自動販売機、業務用空調設備、家電製品、医療用機器、パチンコもやったことある。そのとき上司に命じられていたのは、工場とうまくやること。工場の作業工程、ラインに配慮することだった。ちょっとばかしの見た目よりは、効率第一。そのときは、そりゃそうでしょ、と全然疑問に思わなかったね。デザイン会社とはいっても、グラフィック系とは違い、周りはガテン系の世界だったし、この角度がちょっと。。。なんて女々しいこと言ってんじゃないよという雰囲気だった。本当はそういうのは全然違うと思っていたけど、実現するのは不可能なんだろうなあと思っていた。
アップルは自社工場を持たない。その都度、デザインを形にできる技術を持っている工場をパーツことに探して発注する。工場側も自社の技術についてアップルにプレゼンしてアピールするそうな。こんなのできません、という工場とはそもそも関係を持たないのだ。オバマ大統領が、アップルの工場をアメリカ国内に作ってくれとジョブズに頼んだとき、それは無理と断られたそうだけど、なんかわかるな。
あと、アップルのデザイナー、ジョナサン・アイブのインタビュー。彼は今はアップルという企業の中のデザイン部門にいるが、最初は独立したデザイン会社で働いていた。企業内のデザイナーで居ることのメリットについて。デザイン会社として大企業の仕事を請け負う場合、そのモノのコンセプトや内部構造はすでに決まっていて、外側のうわべだけをなんとかする仕事が多い。それに対して企業内のデザイナーでいると、物作りのまったく最初から開発に関わることができる。その製品のコンセプト、思想に最初から関われたら、ユーザーに何を届けなければならないか、すべてに責任を感じるだろうな。
デザイン会社にいるとき、いろんな企業と仕事をした。大企業にはちゃんとデザイン部門があって、デザイン界のエリートが就職している。立派なデザインチームがあるのに、なんでうちみたいな会社に依頼してくるのか?上司にきいたことがある。それは、長く同じ会社にいると、同じような製品のデザインばかりすることになり、ネタがつきる。それに社内のしがらみが強くて、デザイン部門がわがままを通せない。そこに風穴がほしいから、ということだったが、それでもあまり風穴ぽいデザインは通らなかった。
社内デザイナーさんたちは、われわれ社外のデザイナーをどう思っていたのかな。お互いどういう立場であれ、いい仕事さえすればわだかまりも帳消し、途中がどうでも、いい結果が出れば最終的にはいい関係になるという、それだけを信じてもくもくとやるしかなかったけど。。。
そうなんだよな、そのときも、ユーザーが何を欲しがっているかは二の次だった。これしかないんだから、このなかから選べよ、みたいな。ユーザーの要求はいつもぼんやりしている。こんなんじゃなくて、もっとちがうやつ、みたいな。はっきりとこうとは言えないが、少なくともこれじゃないの。そういうとき、あなたが欲しかったのはこれですね、と差し出して、ああ、これだ、なんでわかった?と言われたら最高だろうな。
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blogにタイトルをつけるのを忘れていた。この本を読んで新たに思うのは、ロジスティックが大事だと言うことですね。アイデアや技術が知的財産であるためには、物流の精度が欠かせない。
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今、もし私がジョブズなら、自動販売機をどうにかしたい。しゃべったりPOSシステム搭載なんて、消費者にはなんのメリットもない。「缶を取り出すとき、かがまなくていい高さ。」これをどうにかしたい。ゴロンっという音もいやだ。