日本の「情報と外交」

日本の「情報と外交」 (PHP新書) [新書] 孫崎 享 (著)

本書によると、イラク戦争の反省から、アメリカの政策決定に必要な情報伝達システムが変化しているそうな。「知るべき人」への情報から「共有」の情報へ。「知るべき人」への全幅の信頼で動かすのではなくて、組織全体が情報を共有し、組織全体が「知るべき人」の指揮がなくとも機能するようにしようという考え。情報をシェアすることで個人個人にとっては新たにかかる手間もあるが、結果的に組織全体から見れば効率が上がり、重大な判断ミスのリスク軽減になる。

たとえば今の時代だと、プロジェクトが発足すると、まずメーリングリストが作られ、関係者のアドレスが登録される。営業、ディレクター、プログラマー、デザイナー、いろんな立場の人が、コンテンツとそれぞれの間の連絡事項を共有する。言われたことだけやってればいいのと、全体の意図や進行がわかってそれをやっているのでは、全然違う。

わたしは様々な相手と様々な場所や組織で仕事をしたが、こういうやり方が前提なところと、まったく受け入れられないところ、移行中でシステム管理者が苦労しているところ、いろいろだった。

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思い出すのは、311の緊急支援物資の仕分けボランティア先の責任者の人が、その後日経ビジネスオンラインに寄稿した文章。あれは単に、数日後に11tトラックが出るというのに、何も出来ていない状況を見たボランティアがキレて、それぞれが好きにやるべきことをビシバシやっていただけだったんだけど。そもそもボランティアの人たちは、誰かに動員されたのではなく、twitterなどで情報を得て、個人個人が自主的に集まってきた人たちだった。

ボランティア組織に「マネジメント」は必要か?:日経ビジネスオンライン

ああ、思い出した。ボランティア仲間のお子さんとその友達が来てくれて「このおねえさんに何をやればいいかきいて」ってお母さんに言われた。その子たちはうつむき加減にわたしの所に来た。その子たちはもう中学生だったので「じゃあここ(体育館)を一周してざっと見渡して、どこに何が集まっているか把握して、やるべきことを自分で判断してやって」と言った。すると彼らは顔を上げ「ハイッ!!」と目を輝かせて走って散って行った。すげえなヤル気まんまんじゃないの、このごろの子どもは素晴らしいと驚いたのだった。

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あと、イラク戦争開戦時に、まちがった政策だと批判して、面倒くさい人扱いされたが、あれから10年経った今、結局自分は正しかったのに、みんな知らんぷりしてるのはどういうこと?と、著者はいう。ですよねー。わたしもなぜなのか知りたい。