相模川河口はかつてはシギチドリ飛来地として有名な干潟だったらしい。千葉から神奈川に引っ越してきて最初に買った「かながわの鳥図鑑(神奈川県発行、野鳥の会神奈川支部編集)」にそう載っていた。当時の家から相模川沿いに3kmほど下流がその場所だった。またシギチに会える!だが行って見たらもう干潟はなかった。
変だなあと思いながらも鳥を見るのはあきらめて、海に通ううちに知り合った柳島のサーフチームに入れてもらい、河口でボディボードをやっていた。冬になるとサーフポイントから少し沖にくるカンムリカイツブリやカモメ類、アジサシ類を波待ちの合間に見たものの、もう海岸には鳥は居ないと思っていた。それから幾年月、寄る年波に勝てずいつしか海にも入らなくなった。
去年の夏、早朝アオバトが海岸に来るかもしれないときいて、夜明け前の河口に通ってみたら、意外といろいろな鳥がいることに気がついた。毎朝お会いする地元の方々から、昔のお話しを聞く機会もあった。鳥の先生が教えてくれて、オレたちもよく見たよ。年寄りも子どももみんなで集まってよー、楽しかったなあ。バードカービングも教わったよ。魚は潮が大事なんだ、よそからきたヤツらはそれを知らねえ。あそこ行ってみな、変わったのいるよ(その足でその場所に行ってみたらウミアイサがいた)。
そしてかつてここで鳥を見ていたという方から当時の資料一式をいただいた。その方は大磯から自転車で河口に通われたそうだ。今では図書館の郷土資料のコーナーで閲覧することしかできない貴重な資料。河口で季節初めの渡り鳥を見たとき、珍しい鳥を見たとき、えっ?これって?と思ったとき、この目録をながめる。すると、当時も同じ記録があったりする。干潟はなくなっても、渡り鳥たちはこのルートを通っている!そう思うとちょっとじんわりする。