実は長いことペシャワール会の会員でした。といっても会費を振り込むと、1年に4回報告書が送られてくるだけなのですが。(東日本大震災があった年、毎年会費を納入する月に送られてきた報告書には「今回は振込用紙を同封しません」とありました。まずは日本国内の同胞を助けてくださいと。かつてペシャワール会の現地の活動に参加した人たちも、被災地に行ってそのノウハウを生かしていますと報告されていました。)
911の報復として始められた空爆がショックで(だってそこに住んでいる人の大半はテロとは関係ないんですよ、アメリカ国内の人たちの腹いせのために無実の人を殺すのか?)何かせずにはいられませんでした。中村哲先生の活動は以前から知っていましたが、一歩踏み込んで会員になったのは、アメリカの政策に反対だったけど何もできなかった、税金を使われることで加担してしまった、武力で報復するよりもそのような動機を持つに至った環境を変える方がいいと証明したかった、というのがあります。
アフガニスタンでの用水路の工事は、もしも会が撤退した後もずっと現地の人たちが自分で保守管理ができるよう、高価な重機やコンクリートなどを使わず、そこにある材料で昔ながらの手法で行われています。信玄堤など日本の江戸時代以前の治水技術も参考にされています。
水路が完成し、砂漠だった場所が緑の畑に変わった写真を見たときは本当にうれしかった。相手をこちらが思うように変えたいという上から目線の評価ではなくて、このストーリーが究極の男のロマンだからです。敵地に丸腰で乗り込んでいって、人々を説得しまとめあげ、自然を相手に戦いながら産業を興す。大勢の人が仕事と食料を得て妻子を養えるようになる。これ以上のロマンありますか?
このような事業を行なえるのは日本が現地に軍隊を駐留させていないからです。日本はアメリカの政策とともに動いていますが(というか、日本がアメリカにさからえないのを現地の人たちはよく知っている)、その一方で民間の丸腰の善意ある人の活動が日本人の別の面を印象付けてくれています。それが、日本人がテロの対象になる危険から守ってくれていると思っています。
政府による公式な態度と、治世者の近親者や民間による別の活動の2枚舌、これが小国の外交の基本と塩野七生の本に書いてありました。今回の安保法案で自衛隊が現地に駐留すると、逆に紛争地の前線で働いているNGOや民間企業の人が危険にさらされることになります。ペシャワール会だけでなく、海外に滞在して働いている人はみなそう言っている印象です。
政府の建前の方に舵を取りすぎて、大切なもう一方の活動ができなくなってしまう。ますますアメリカべったりになって、日本は国際社会の中で何ができるのか?民間の人が自主的に独自な活動を模索することが制限されてしまいます。それは日本にとって大きな損失だと思います。
日本は資源がなく通商に頼っている国。アメリカや中国のように多少乱暴なことをやっても相手を脅して報復を抑えつけることができる大国とは違います。国際社会で生き残るための、独自のきめ細やかな方策があるはずです。国が一丸となるというよりは、ある人たちはハイテクの武力を担当し、またある人たちは別のルートを行く、結果なんとかなるでいいと思います。
今、国内は意見が割れています。わたしはそれがイデオロギーによるものではなくて、世代間格差の不満が出てきているのだと思います。若い人に戦地に行ってもらうなら、福祉を手厚くして女性=母親や若年層の不公平感を無くさなくては。そのツケで高齢者が十分な医療を受けられなくても仕方がないぐらいの覚悟が必要でしょう。
あと、わたしは、イラク戦争の教訓から何かを感じている人が多いとも思っています。下手に武器を持っていたために、あらぬ疑いをかけられ国土を軍需産業の在庫一掃処分セール会場にされてしまった、明らかに大義なき戦いなのにどの国も助けてくれなかった。ああなりたくないという。軍需産業はいつも一定の需要を確保しておかなくてはなりません。それがどこになるか?産業廃棄物処分場にされるのを慎重に避けなければならないと思います。
原子力ムラの問題と同じく、「こわい危ない」VS「エネルギーどうする?」という、持ちネタが2つしかない状態では、議論はずっと平行です。電力問題における送電分離のような新しい発想の政策を探す方に労力を使った方がいいと思います。そのモデルは、日本と同じような大国に接しているユニークな小国にあるのではないでしょうか?イタリアのルネサンス期の国かもしれないし、北欧または中米のどこかかもしれない。また、日本の過去にもあるかもしれない。もしかして沖縄(琉球)か?
これからの戦争は国家対国家ではなく、対テロリズム、情報戦らしいです。「ビートルズのビジネス戦略」という本に、ヒットはまず地方で発生した独自のスタイルに端を発するとありました。今までは日本人が世界のどこへでも自由に行けて現地にとけこめる通行証(憲法9条)を持っていました。それを使って紛争地の前線で働いていたNGOや民間企業の人たちの経験も、新しい安全保障を考えるヒントになるのではと思います。
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今日、日経のサイトを見ていてふと目に入った記事からのリンク
安保法制について考える前に、絶対に知っておきたい8つのこと - 伊勢崎賢治『戦場からの集団的自衛権入門』から
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中東の安保法案報道、広がる「米国と一緒に戦う」日本像(川上泰徳) - 個人 - Yahoo!ニュース