自衛隊の国際貢献は憲法九条で―国連平和維持軍を統括した男の結論

自衛隊の国際貢献は憲法九条で―国連平和維持軍を統括した男の結論 伊勢崎 賢治(著)

東チモール(大砲が数台クラス):国際平和維持軍統括 完全武装解除後コスタリカ方式の非武装を提案したが拒否され再度クーデターが起こってしまった。

シエラレオネ(未成年のギャングクラス):国連PKO武装解除部長 9ヶ月で5万人の完全解除に成功。しかしそれは戦争犯罪者の罪を問わず代わりの仕事を与えることと(道路整備など公共事業を即席に作る)引き換えだった。戦争犯罪の処理が行われずに、再度戦争が起きないと言い切れるのか?

アフガニスタン(年季の入った職業軍人クラス武器も無尽蔵):国連ではなく日本政府からの派遣。武装解除とは政治的な圧力を利用し交渉で行う。DDR(武装解除DIsarmament、動員解除Demobilization、社会復帰Reintegration)はその順序通りやらなければならない。先に仕事を与え社会復帰させれば自然と武器を差し出すだろうというのはあまりに甘い。日本はその事情をよく知らずに引き受けてしまった。

社会復帰事業にしか資金を使えないことになっていたが、先に武装解除をしないといけないため、それにも資金は使われた。地元の起業家にどれくらい資金援助をすればあと何人雇えるかなど調査し、軍閥の幹部に数字を見せて説得した。

非武装中立という日本人の信用により効率良く話し合いが進み予想より早く解除完了。

北部同盟軍閥を解除するのが早すぎて、タリバンに代わるはずだった新政府の軍がまだ整備されていず、力の空白地帯ができてしまった。

九条に基づき政治と財政の力で外交を行い、平和を達成することに。他国ではできない日本の役割がある。

自衛隊を派遣しないと交際貢献できないという議論は、対テロ戦を表面しか見ていない。

貧困対策をしていれば紛争がなくなるというのは正論のようで現実的ではない。

日本は資金協力をする際の、引き換え条件のつけ方を習熟すべし。実際はかなり貢献しているのに、何も言わず出しているので、感謝されない。(アメリカと対照的)

社会復帰事業の問題:戦争はお金で片がつくという安易な気持ちにならないか?かつての戦争犯罪人が職業訓練などを受けてのちに社会的に成功した場合、被害者である虐殺された側の住民が納得できるか?

著者はアフガニスタンのNGOを腐敗していると批判していたが、著者がDDR事業で同様のことをやって、それが正しかったのかどうか自身もいまだに疑問に思っているからなのではないだろうか?改憲派だけでなく護憲派への批判も必ず入れているし、著者は見かけの口調とは違って、実は内省的でバランスの取れた人だなという印象。

兵站など後方支援は、アメリカ軍はもちろん国連平和維持軍でも民間に委託するケースが増えてきた。官軍の出番は不要。

自衛隊がどこの部隊の指揮下にも入らないと、現地で人道的な事件に巻き込まれた場合、裁かれる法律がない。

歩兵部隊を送ってしまうと、日本の得意分野である中立性を持った仕事ができなくなる。憲法9条にもとづく外交力が生かせるのが日本の特徴。世界で日本に代わる仕事ができる国はない。それが派兵すると台無しになり国益にならない。

人道援助だけやっていればいいというわけではないと著者は言う。日本の経済力も落ちた。もうお金だけで解決は難しくなるだろう。そこでやはり9条を持っているという特徴を生かした国際貢献が価値を持ってくるのではないだろうか。

今後、イラクやアフガニスタンで和平が実現するには、タリバンとの和解路線がある。そのときに日本の中立性が役に立つのではないか。主体的にアメリカに協力できる。

戦争屋のアメリカ&紛争解決屋の日本、最高のコンビじゃないですか。日米関係は安泰です。