ドイチャン最高!オレたちのドイチャン!土井選手が3大グランツールの一つ、スペインのブエルタ・ア・エスパーニャに出場したとき、現地でレースを取材していたジャーナリストの岩佐千穂さんが、twitterで「ドイチャンが集団の先頭を牽いてる!」と知らせてくれて、一瞬その映像をiPhoneで中継してくれた。国際映像には映らなくて、国際映像をもらって放送しているJsportsにも当然映ってなかった。けど、わたしたちは見たよ!そのシーンを。8月のスペイン、熱くて乾いてて木陰など無くて砂煙を上げながら進むプロトンを。
あのときドイチャンは何を考え、何を感じて走っていたのか?あれから数年経った今、またあのときを思い出して、しみじみと味わいながら読んだ。たぶん一瞬とは言え、レースを勝手に中継なんて放映権上かなりやばいんだろうな。後でJspoからかなり叱られたって聞いた。でも日本人のロードファンにとって、あれは素晴らしかった。
この本は構成がしっかりしていて読みやすい、特にラストの文章はかっこよすぎで、普通のアスリートぽくないと思い、巻末を見ると「企画:佐藤 喬」とあった。スポーツライターかなと思って検索すると、自転車関係の本が1冊出てきた。
その佐藤 喬さんの著書。全日本は、国内におけるガチな戦いの場。国内最高のレース。このレースに勝てると、海外で活躍している選手は、日本チャンピオンのジャージを着てレースで走ることができる、チーム内での扱い特に大きなレースの出場メンバーに入れる可能性が増す。国内で走っている選手は、日本でしか走っていなくても実力はあるということを証明できる。
この年の全日本はよくおぼえている。不遇だった佐野淳哉選手がまさかの勝利、負けた清水都貴選手は実は引退を決めていたため最後の年だったという(移籍情報を公開できる時期までファンには知らされなかった)。。。選手一人ひとりのことを詳しく調べていて、当日の選手たちの思惑や行動をよく取材している。八幡平はコースが平板で面白くないと思っていただけに、単調に思われがちな時間にも様々な駆け引きがあったことがわかって、時が経って読んでもおもしろい。こういう本がもっと出てくれればいいな。
ところで、その前年2013年の全日本は大分の県民の森であった。アップダウンがきびしい山岳コースだったが、現地でレースを見ていた人から、優勝した新城選手、長時間逃げた土井選手、集団からのし上がった清水都貴、山岳と言えば増田選手、そしてもう一人、アシストですごい働きをしている選手がいた、それは平井栄一という選手だった(当時ブリジストンアンカー)と聞いた。それをきいてわたしはオー!と思った。
平井栄一選手は神奈川出身、第一回茅ヶ崎ベロフェスティバルの模擬クリテで、お約束のフミの1位に肉薄した選手。134号線を走っている姿を時々見る。2013年、山岳と雨と霧の全日本、あのときのドキュメンタリーも読みたいな。次々と逃げが脱落し、集団から上がって来たエースたちが上位に入った、そういうときの各チームのアシストの仕事に焦点を当てて欲しい。
あと、海外で走っている選手が、とんでもなく強い時があるが、あれはやはり実力なのか?全日本といえどもヨーロッパで走るための好条件を得る材料にしかすぎなくて、そのためなら何でもやるのか?「チャリダー!」で、新城選手が「必要なことは何でもやる」と言っていたが、あれは具体的に何なのか?それをジャーナリストが誰も聞かないのはなぜなのか?
同じく土井雪広:著、佐藤喬:企画構成のトレーニング本。ドイチャンマニュアル。真剣に将来ヨーロッパで走りたいと思っている若い人にとって有用な情報が惜しげも無く書かれている。あと、私のようなレース観戦オタクやホビーレーサーにとっては、グランツールに出場している選手になった妄想の手助けをしてくれる。これを読んでからだとレースの観戦もさらに面白くなるだろう。