珍しく我々はあることの構造に関して、真剣に検討していた。もしかして険悪?とさえ言えるほど真剣だった。「だから、わかってる?ここだよ!」と紙の上に鉛筆を突き立てた時、何かがドサっとその上に倒れ込んだ。ヤツだった。「あー来たよ」「あーもう」同時に声を上げるわたしたち。ドサ=自分も一緒に「それ」に加わりたいという意思表示を込めて、対象の上に身を投げ出す音。我々は慣れっこなので、このような時、邪険に彼女を払いのけても無駄なことを知っていた。どけてもどけても同じ行為を繰り返す。何十回何百回でも、そしてそれを彼女は楽しんでやるのだ。ので、彼女の機嫌を損ねないよう、そーっと押して、懸案の単語だけでも見えるようにして、会議は続けられた。が、時間が経つにつれて、彼女を押さえていた彼のシルエットが心なしか丸くなり、目から精気が消えてきた。「やられてる」。柔らかい毛皮に包まれたポヨポヨのお腹を押さえている手から、みるみる彼のヤル気が吸い取られている!「大変だ」私は席を立った。そしてカメラを手に戻って、その様子を記録した。すると彼の私を見る目が言った「ヤバイ、やられてる」。我々は、がまんできずに笑い出した。
「ここが問題なんだ!」「ここがっ!」
左手でシャッターを押すのは大変むずかしい。カメラにも左きき用ってあるんだろうか?