1970年代以後、自治体の住民が、国や電力会社に対し、原発の立地や稼働の差し止めを訴えた原発訴訟はほぼ20例。地裁、高裁で住民が勝訴したのは2例のみ。しかし最高裁で結局敗訴している。本書はその判断を下した裁判官たちにインタビューしたもの。
住民敗訴を決定した4人、勝訴の判断を下した2人が実名で語っている。高裁でもんじゅの件を担当した人の話が記憶に残った。伊方原発の最高裁の判例により、難しい技術的な判断は、専門家にまかせるべしという風潮が、各地の地裁高裁にじわじわ広がった。
が、その裁判官は、原告被告双方の技術者から、1年間かけてレクチャーを受け、途中から住民も参加し、原発のしくみを学んだ後、自分でその危険性について判断を下した。
判決文の冒頭には、高速増殖炉について、それがどういうものか長い記述があった。それは、最高裁の裁判官へのメッセージだったが、バトンは渡らず、最高裁では住民敗訴になった。