武器輸出と日本企業

武器輸出と日本企業 (角川新書) 新書 - 2016/7/10 望月 衣塑子 (著)

オーストラリアに潜水艦を売るという話がポシャった経緯も詳しく書かれていた。その原因は政治的な駆け引きによるもので、技術や経済の問題ではないらしい。日本はアメリカよりかなーり遅れて、しかも性急に武器業界に参入しようとしている。日本の売りである高い技術力が流出しない技術的な仕組み(ブラックボックス化)や、取引上の制度が整っていないうちに、とにかく契約をと上からお達しがあって、下請けの民間の中小企業はとまどい不安に思っているらしい。

日本の有名な企業が、海外の子会社を使って軍需の大手会社を買収、傘下にしていたという現実も知った。海外の子会社が行うなら武器輸出三原則の適用外らしい(その武器輸出三原則もすでになくなったが)。武器といっても、装備品そのものだけでなく、多岐に渡る装備を管理するシステムなど、ITの世界も例外ではない。

この本にたびたび出てくる言葉「デュアルユース」。軍需にも産業にも使える技術。というと思い出すのは、ああ原発ですね。皮肉にも原発事故現場で使えるロボットを開発していた、大学の研究室に軍需企業からオファーがあったらしい。国内では削られる一方の研究予算を確保するために、または、世界基準で研究の成果を確かめられるコンテストに出るために、従来の倫理規定の外側に踏み出す研究者もいるらしい。

以前、原発でも科学者にとって同じような問題があった。倫理的に問題があるのはわかっている、しかしやらなければ取り残されるという焦燥感。軍需とは一切関わらないと謳っている大学あり(新潟大学)、軍需に踏み切った大学あり(東京大学)、一つの大学の中でも意見が二分しているところもあるそう。これは面倒くさくて大変な問題だけれど、どちらかが折れてバランスがとれなくなると、「研究者が居なくなって技術的な後進国に落ちぶれてしまう」or「政治的な保護のシステムが出来ないうちに一気に優秀な技術が海外に流出してしまう」というどっちにしてもよくない結果になりそう。

世界の武器市場で注目されているのは、ロボット、無人監視システム、無人攻撃機らしいが、無人攻撃機を操作するパイロットの心理的な負担が問題になっている。となると次に必要とされるのは人工知能かな?これから一体どうなるんだろう?恐ろしい世の中になりそうな。