最近亡くなっていたことがわかったイラストレーター原田治さんの著作。ポップなイラストで有名な著者だが、この著作はみすず書房より。著者が好きな画家についてのエッセイと、日本美術についての思索。
著者は戦国時代の兜のデザインに魅せられる。当時の時代背景を、フロイスの「日本史」から類推する。。。ところで、はっと思いつくことがあった。「耳鼻そぎの日本史」に、中世(戦国時代)とは、中国の律令制の影響が薄くなり、それ以前の習俗が復活した時代だったとあった。
著者は縄文式土器に残る日本人の美意識が、弥生式土器では見られないという。縄文式とは別のものになったというのではなく、美意識そのものが存在しないという意味で。縄文の後の日本美術はほとんどが大陸からの輸入によるもので、日本人のオリジナルとはいえないと。それが復活するのが、戦国時代。兜という機能や、勝ち負けの意味に関係ない、動植物の不思議なモチーフこそ、縄文的な日本人の価値観や美意識の表れであると。
ここで話が飛ぶが、最近「サピエンス全史」という本が話題になっている。NHKの「クローズアップ現代」の特集を見ただけでまだ読んでいないが、そうよね!と膝をたたいた点があった。それは、農耕の時代は人間が小麦の奴隷になった時代だった、というところ。わたしも日本史とは稲という植物が人間を支配した歴史だと思っていたので、同様の事を思っていた人が居た!とうれしくなった。
日本の中世とは、飢饉により稲の支配が弱まった時代。古代に稲が日本に渡ってくる以前の文化、習俗、価値観、美意識が復活したのでは?外部の文明の影響もあるだろうが、気候変動による内部の食糧事情からも、変化があった時代だったのではと思う。