「南京事件」を調査せよ

「南京事件」を調査せよ 単行本 - 2016/8/25 清水 潔  (著)

東京ポッド許可局でプチ鹿島さんが推薦していた本。
推薦図書論2017|TBSラジオAM954+FM90.5~聞けば、見えてくる~

以前、植木千可子さんの「平和のための戦争論」を読んだとき

過去の戦争の原因について検証し総括しなければ、次の戦争の判断もできない。戦争に対する日本政府の政策が不明瞭。謝罪や釈明を意識せずに事実はどうだったかを検証してはどうか。

という著者の言葉が心に残った。歴史の解釈や国益は置いておいて、事実はどうだったのか?という点のみをまずは検証し記録に残す、それなしにこれからの政策は議論できないという。


この本を書くために(実際はテレビ番組のための取材だったが)著者清水潔氏が行ったことはまさにそれ。一次資料にあたる、証人本人に会ってインタビューする、公文書の資料から話の裏を取る。事件からかなり時間が経っての調査は難しかったと思うが、著者よりも先にこの件を同様に調べた人がいて、その資料に助けられる。とにかく資料を残しておくって大事だな。後世の人が何かを調べたいと思ったときの助けになる。

事件の内容は凄惨なものなので読んでいるうちに気分が悪くなって読み通すのがしんどいのだが、著者がこの事件をどのように検証していったかという具体的な足跡が分かる。

もちろん南京事件はあったか無かったかという話題をふられたとき、これからは私は「あった」ときっぱり言える。

この著作に収録されている資料を読むと、南京事件は何故起こったかというと、南京城内と付近の住民100万から私服の兵士を見つけるのが困難だったので、とにかく男性を捕虜として連行したが、今度は全員の水や食糧を確保できなかったので(自分たちのための兵站も全く間に合ってなかった)、困った軍部が揚子江に捕虜たちを引き出し並ばせ計画的に抹殺した(最低でも3万人)。ということになると思う。

私の個人的な感想だが、日本人の感覚では圧倒的な中国の数のスケールに対応できなかったため、キレたのでは?という感じがする。素人の兵士たちが極限状態で未経験のことに面したとき、恐ろしいことが起こる。やはりプロの軍人は「加減がわかる」という点で必要だと思う。