「鳥ってすごい! 」樋口 広芳 (著)を読んで、この本のことを知った。
多様な種の保存に広い面積の樹林帯が必要だということ。災害や気候変動などによって生物の種の存続が危機になるほどの大規模な環境変化が起こったとき、連続した広い面積の生息エリアがあった場合よりも、断片的な生息エリアが点在していた場合の方が、多くの種が絶滅する可能性が高い。たとえばヨーロッパでは寒冷期に落葉樹林帯が南下しようにも地中海に阻まれて絶滅してしまったなど。
東日本大震災の津波の被害でも報告されていたよね。(震災後の自然とどうつきあうか - r2、巨大津波は生態系をどう変えたか - r2)大規模な自然災害から逃れるのはほぼ無理だが、惨事の後に元のように自然が復活するには、その生物の生息エリアを分断しないで連続させておくことが大事だということだった。
日本における自然保護の問題点。意識の高い市民のボランティアによる小規模な地域密着型の保護活動は驚くほど盛んで数も多い。しかし、大規模な開発に対抗するなど、経済的な措置が必要な広範囲な活動はできていない。原因はNPO、NGOの税制の問題など政治的な制約にある。日本における環境保護の歴史は、高度経済成長期の公害対策に始まったという経緯がある。日本における環境政策とは=人命を守ることだった。人命に支障が無いならば道路建設など経済活動が優先され、マクロな視点による環境全体への配慮は後回しにされた。(NPO活動の制約が改善されたのは、阪神淡路大震災がきっかけだった)
また、日本人にとって、自然とは日本庭園の美意識に象徴されるように、人工的なミニチュアの世界である。日本人が好む自然とは昆虫。目の前にあり小さな物を好む。特にトンボの人気が高い。
この前に読んだ「ぼくの美術帖 - r2」で原田治が、弥生時代以後の日本は水稲のプランテーションになり、効率と機能性が重視される世界で、独自の美意識が花開く余裕はなかった、というような意味のことを書いていたが、日本人にとって自然=水田や植林された山なのかなあと思う。