幻獣ムベンベを追えの後書きに、著者の高野秀行氏と早稲田大学探検部がコンゴの奥地でUMA探しをしているちょうど同時期に、少ししか離れていない場所で、日本人の研究者が人跡未踏の生態系がある森林を発見していたとあって、それは誰だったのか?どんな旅だったのか知りたくて図書館で検索。
コンゴの奥地で同時期に、日本人の若者が同じようなことをやっていたとは。んで、この本の著者、三谷雅純氏も、高野秀行氏と同様に、夜、暇で仕方なかったと(笑)。著者が持ち込んだ本のリストに「術語集ーー気になることばーー」(中村雄二郎)があって、なつかしいなーと思う。わたしも若いときに読んだ。暇でしかたないときに。
メモ
ンドキの森のニシローランドゴリラ、チンパンジーの生息密度は、ゴリラの生息密度が高い。植生の利用状況を調べると、ゴリラはチンパンジーが利用しない湿地性草原の水草の地下茎や大量のツユクサを食べている(ンドキの森の植生タイプは4つ。湿地性草原、川辺のリンバリ林、異種混交林、内陸のリンバリ林。リンバリとはジャケツイバラ科の豆の木)。ゴリラは果実も食べるが、植物性タンパク質を含む繊維質食品への依存度が生息密度を決めるらしい。果実がなる異種混交林は、ゴリラもチンパンジーも利用。
繊維質:タンパク質に富む一方、摂食単位当たりのカロリーが著しく低い。繁殖に必要な量を摂るのは大変。
果実:多量に含まれる糖分がカロリー源になる。ビタミンも多い。適度に菜食対象に取り込めば効率的。
果実と繊維質ーー糖とタンパク質ーーの摂食割合は、ゴリラにとって重要であるに違いない。そこには最適なバランスがあり、ゴリラはンドキの森が提供する制限の中で、その最適バランスを実現しているに違いない。
ゴリラより体重が軽いチンパンジーにもまた独自の最適バランスがあるだろう。そのわずかな差が、採食行動、土地利用のパターン、集団形成の違いに影響を与えたに違いない。
果実をめぐって(ゴリラ+チンパンジー+ゾウ)と(樹上性霊長類+鳥)という二つのグループ(果実をめぐるギルド)がある。
(ゴリラ+チンパンジー+ゾウ):熟すと落果する。暗い色。甘い匂い。果実も種子も大きい。繊維質。高糖度。ゾウとゾウ散布型果樹の共生関係がまずあり、それにゴリラとチンパンジーが乗っかった。
(樹上性霊長類+鳥):落果しない。鮮やか。小型。果汁が多い。鳥が丸呑みしやすい。鳥と鳥散布型果実の共生関係に樹上性霊長類が後から乗った。
ゴリラやチンパンジー、樹上性霊長類は、あらかじめ成立していた熱帯雨林の「動物--植物の共生関係」をうまく利用しながら、後から果実をめぐるギルドに参加し、現在では、オリジナル・パートナーに劣らぬ種子散布者として、熱帯雨林の中で重要な位置を占めるようになった動物たちである、と推理することができる。(p.263)
このような共生関係の理解は、例えばゴリラの保護という行為が、単にゴリラ一種の保護を意味するのではなく、ゴリラが果実の採食によって無意識の内に「育てて」いる次世代の熱帯樹をも保護することにつながるのだと、我々に教えてくれる。自然の保護管理策を種間関係の理解なしに語ることは、無意味である。ゴリラのようにいくら貴重な種であっても、特定種のみの保護管理というものは、本質的に成立しない。(p.263)