後生だから・・・

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「後生だから・・」は懇願の切実さを強調する言葉として、「許してくれ・・・」あるいは「見逃してくれ・・・」と続くかたちで使われるように思います。でも、懇願といっても「後生だから、恋人になってください」という使い方は間違っているように聞こえます。
そもそも、「後生(ごしょう)」とは何でしょう?後生とは来世のことです。仏教の輪廻転生を前提として、一度死んでまた生まれ変わった人生が「後生」です(転生して人間になるとは限らないというのがすばらしいアイデアですよね)。しかし、なぜそれで「後生だから許してくれ」といった使い方が成立するのでしょうか?
「後生だから・・」と同じように懇願の際に使われる言葉に「一生のお願い」というのがあります。「一生のお願いだから、これ買って!」って聞きますよね。「一生のお願い」とか言っても、「こないだも一生のお願いって言ったじゃないかあ〜」というのがよくあるパターンです。実は「後生だから・・」とはこれと同じなんですよ。もういまの一生ではお願いしきれないから、後生の分を前借りでお願いしますというわけです。
「後生一生」という言葉を知ってますか?「後生一生のお願いです」という使い方です。二生分のお願いなわけです。となると、「後生だから、恋人になってください」ていうのは、間違いどころかけっこうロマンチックなお願いということになるんですかね?
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と、書いてみましたが、この解釈は間違っているように思えてきました。

「後生大事」と「後生=極楽往生」という考え方があるようです。要するに、後生のために今生(こんじょう:今の人生)で徳を積みなさいという教えです。いいことしとけば極楽に行けるし、来世はハッピーというわけですね。ということから、「後生だから・・・」というのは「後生だと思って・・・」という使い方にも変化して、「徳を積むと思って、哀れな私のお願いを聞いてくださいよ」という調子のいいお願いの仕方ということになります。う〜む。後生の前借りという解釈とだいぶ違ってきたなあ・・・・
蛇足ながら、「往生(おうじょう)」という言葉も面白いですね。「往生」ってのは「死ぬ」ことですが、同時に「生まれ変わる」っていうことを意味しているわけです。「往生せい!」っていうのは、「死んで生まれ変われ」ということなわけです。コンピュータならリスタートですが、初期化されてやり直しじゃなくて、別なモノで出直してこいっていうのが面白いなあ。
(なんか、仏教のお勉強みたくなってきた)

落語に「後生鰻」という噺があります。これにヒントがあるようです。
後生鰻

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このページは、oshigeが2005年1月24日 15:53に書いたブログ記事です。

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