幻の漂泊民・サンカ

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幻の漂泊民・サンカ (文春文庫) 文庫 - 2004/11 沖浦 和光  (著)

著者の「竹の民俗誌」を読んだときに、戸籍を持たず山に暮らし漁撈採集生活の傍ら竹細工などで収入を得ていた人々が、1950年代まで居たと知って衝撃を受けた。そのサンカ(山家)と呼ばれる山人についての取材報告。

だがその前に、サンカについて流布された間違ったイメージの訂正のためにかなりな枚数が割かれている。amazonで検索すると出てくる著作の中にも、民俗学的に公正な取材に基づいて書かれた物でなく、なかば想像と創作によるものがある。どちらかというとその方が多いので注意。

わたしは最初、サンカは縄文時代の生活スタイルをそのまま続けている、アマゾンのイゾラドのような人々かと思ったが、著者は、サンカの人々が山に暮らすようになったのは、中世の飢饉がきっかけではなかったのか?と推測している。

本の最後に「サンカ民族の基本的類型」というまとめがある。外部の人間に分かる自分たちの記録を持たないため、誤解されやすい彼らのことを、公正に記録しておかねばと言う著者の気持ちというか決意がわかる。

サンカは家族単位で行動し、数家族が集団で移動することはない。
決まった回遊路を持つ。
生態系をよく知っているので乱獲はしない。
1ヶ所に長期間とどまらない。

またサンカは、交易相手である村人との信頼関係を大事にしている。
家族内での分業ができあがっている。
サンカ同士でヨコの連絡はとりあっているが(結婚式などで大人数が集まることがある)、タテの主従関係はない。

サンカは集団で1ヶ所にとどまらないなど、自然にダメージを与えない生業のスタイルをとっていたようだ。また、同業者同士で競合しないようにも気遣っていた。彼らのスタイルは、現代人が自然と接するときの手本になるんじゃないだろうか。

わたしが、山に持って行ってはいけないと思う物は、競争心だ。競争心とは、組織内において上位の者が部下を支配したりポテンシャルを上げたりするのに利用されるもの。重労働が課される農耕社会においては、有効だろう。

けど生産性が有限な山では競争は意味ないし、かえって自分たちの首を絞めることになる。山を利用するのはいいが、山を舞台に競争するのはよくない。山はそういう場所ではないから。その前提が分からない人は、いつまでも自然関係の団体とトラブルになるだろうな。

レヴィ=ストロース講義

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レヴィ=ストロース講義 (平凡社ライブラリー) 単行本 - 2005/7 クロード レヴィ=ストロース (著), Claude L´evi‐Strauss (原著), 川田 順造 (翻訳), 渡辺 公三 (翻訳)

1986年に行われた、講義と日本人の学者たちとの質疑応答。人類学を始めとする学者たちとの質疑が行なわれた後、最後に経済人である日商岩井の人から「自分は50年以上海外貿易に携わり、アカデミズム畑の人間では無いが、この講義を聴いて思うところがあった。世界各地の人々と交易をする際、心からいい取引が出来たと思えるときは、相手と文化的にも相互に深い理解が出来た場合が多い。返して言えば貿易摩擦=文化摩擦である。経済の交流が円滑になるとともに、世界的に文化が融合・均一化される方向に向かうのでは?その際に起こる西欧文明とのひずみに批判が出ているが。。。」というような意味の質問が出る(実際はもっと上品で謙虚な言い回し)。ああ、この後911が起こり世界はテロとの戦いに入るのだなあ、現場ではすでに危機が感じられていたのだと、ぞっとした。博士の答えは「人類学史上、世界的に文化が融合した例はない。文化が均一化されようとすると、内部から多様性が生まれてくる」というものだった。やはりグローバル化は無理というか、不自然なことで、必ずその反発が起きるのだろうなと思う。このくだりは今まさにその実例が進行中なことで、ちょっと震えた。グローバル化とそれへに反発が第一次世界大戦を引き起こした、今まさにそういう状況という。。。

あと「農耕」が人類全体にとって幸せなことなのか?という疑問も提示された。狩猟採集による未開社会と言われているシステムでは1日に2〜4時間の労働で子どもと老人を含む家族を養え、余暇は信仰や芸能や制作に当てられる(たしかに、縄文土器の装飾は暇じゃ無いと無理よね)。一方私たちの社会では長時間労働により多くの人が疲労している。

若桑みどりの「世界の認識方法には2つある、円で囲まれた有限の世界とグリッド状にベクトルが無限に伸びていく世界」という言葉を思い出す。狩猟採集(持続可能で循環する自然環境)と、農耕(開発により際限なく広がっていく農地)。

講演が行われたのが日本というのもあると思うが、「ルース・ベネディクト」の名前も出てくる。人類学の世界では、人類学の研究が多くの人命を救った成功例として、GHQによる日本の占領が語られる。たしかにあの時点ではそうではあるが、占領がいまだに続いているのはどうなのか?人類学の学界は、これから日本とアメリカの関係がどうなっていくのか、政局とは別な視点で注視しているんだろうな。

農耕の起源を探る―イネの来た道 (歴史文化ライブラリー) 単行本 - 2009/7 宮本 一夫  (著)

農耕は人類に安定的な食糧をもたらしたが、それにより人口が増大、さらに外側へ移住し農地を拡大する必要が出てくる。そのようにして、農耕民は居住地を拡大し、狩猟採集民と接触する機会が増えただろう。。。

幻獣ムベンベを追え

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幻獣ムベンベを追え (集英社文庫) 文庫 - 2003/1 高野 秀行  (著)

フィールドに出かけることができないので、本を読み倒しています。

「謎の独立国家ソマリランド」の高野秀行氏のデビュー作。あまり期待していなかったが、おもしろかった!こういう本は、果たして幻獣は存在するのか?という謎が物語を引っ張って行くものだけど、その結果が最初からわかっていても、おもしろい。著作の中では枚数が割かれていないが、現地に出かける前の準備(日本に滞在している現地人を探して現地語を習うとか、装備を提供してもらうために企業を訪ねてプレゼンするとか)の方が、時間も手間もかかっている。

コンゴの奥地の湖の1ヶ所に若者たちが40日間も滞在し、やることは湖の監視(そこまで行くのが大変だっのではあるが)。食糧不足や虫やマラリアとの戦いなどもあるが、何が辛いって、探検しに来ているのに、風景が変わらずやることが単調なこと。分かるわー、わたしも若い頃(探検には行かなかったが)退屈な時間がつらかった。だから双眼鏡を持ってでかけてもフィールドに長時間いられなかった。

今の私はこの本を読みながら、他の爬虫類を調べて!とか、その虫をもっと観察して!とか、植生を調べて!とか、とかとかいろいろ注文をつけてしまう。彼らは学生の探検部なので学術調査隊とは違うのは仕方ないんだけど、ところがそれでもおもしろい。それは高野氏の人間観察力によるもの。結局、一番面白いのは人間なんだなあ。(特にこの男子だけの合宿状態は、三浦しおんさんが好むシーン)

著者は、現地ポーターと一緒に湖を調査しているとき、彼らに見える動物の声や姿に全く気がつかなかったそうだ。視力や聴力といった五感の能力でアフリカ人に勝てるはずもないが、著者は現地の人が何かを発見するとき、何を見ているかをその都度観察した。すると、彼らが集中するとき、それは対象の動物と時間帯や地形がセットになっていることに気づく。いつ、どこなら何が居るという前提があるわけだ。そのことに気がつくとは、著者の人間に対する観察眼はすごい。

ちなみに、著者ら一行が彼の地に滞在した、ちょうど同じ時期、少ししか離れていない場所で、京都大学の研究者が人跡未踏の地「ンドキの森」を発見していたそうだ。ンドキの森についてはナショナルジオグラフィック日本版1995年7月号で読んだのをおぼえている。

見たことがないものを見たい(未確認生物を発見したい)という欲望と、すでに存在は知られてはいるがそれについて詳しく知りたい(霊長類の生態を研究したい)という欲望はどう違うのか?

あと、現地民が何となく怖れている物に、外部からの情報が具体的な姿形を与えてしまった場合、現地の伝承がどのように変化してしまうのか?それが経済的な効果を伴っている場合は?などいろいろ考えてしまう。

このムベンベがいるとされるテレ湖は、画像検索すると出てくるが、人工的にも見えるきれいな円形をしている。著者の報告によると、湖は広さの割に全面にわたり浅い底が続き(1〜2m)、ふちだけが急に落ち込み、外側は周囲よりも水はけがよい、つまりふちが少し高くなっている。それを読んで連想されるのは月のクレーターのような形。そして植生も生物も単調で種類が少ない(さほど離れて居ず気候も変わらないンドキの森とは大違い)。

高野氏は、この湖は隕石が落下した跡では?と推測している。そのようなことがあって周囲が一瞬にして焼失するようなことがあったなら、生物の種類が単調なのもわかる。もしかしてこれは隕石のかけらなのでは?という石を持ち帰ろうとするが、現地ポーターに止められてしまう。多くの企業に資材や装備を提供してもらった手前、ムベンベが空振りだったとしても、なんらかの発見という成果が欲しかっただろうな。

けど現地の人にとっては、古代から残る謎の生物が存在しない決定的な証拠になってしまう→探検客が来なくなってしまう。ここらへんの駆け引きというか、探検客をもてなしてリピーターになってもらいたいが、客がハメをはずさないように監視し行動を誘導もしなくてはならず、そのさじ加減が難しい。。。レンジャーだね。

子どもの頃、ドリトル先生や「積み過ぎた箱船」を読んで、大きくなったら獣医としてアフリカに行きたいとずっと思っていた。でも高校の生物の授業は退屈で退屈で耐えられなかった。わたしもどっちかというと、生物の研究派では無くて、未確認生物発見したい派なのかもしれない。特に若かった頃は。年齢とともに落ち着いてきて、一つのことに集中できるようになってはきたが。

原発事故で、生きものたちに何がおこったか。 単行本 - 2015/2/18 永幡 嘉之  (著, 写真)

巨大津波は生態系をどう変えたかの著者の写真集。図書館のこどもの本コーナーで発見。原発事故と放射性物質の拡散そのものは、短期間の見た目には自然に変化を与えないが、事故により人間が避難したことによって、景観が大きく変わった。水田が乾燥して荒れ地になり、湿地に棲む生物が激減したなど。

中には放射性物質が生物の遺伝子に与えた影響を、自らの危険を冒して調べた人たちも居た。彼らは、長年培ってきた昆虫の培養と遺伝子調査の技術を今こそ使うべきだという強い使命感を持って調査したそう。。。

そのくだりは個人的に胸が熱くなるけど、それはおいといて、そしてわかったことの一部として、放射性物質の生物への影響というのは、かなり個体差があるということ。

かつてアメリカで国家ぐるみで行われた人体実験「プルトニウムの人体投与」のルポルタージュ「プルトニウムファイル」にもそういう報告があった。ここまでは大丈夫という基準を決めてもその通りになるとは限らない。放射性物質の安全基準値は、人体の安全のためではなく、経済や流通上の都合のために存在する。

また「巨大津波は生態系をどう変えたか」にもあったが、災害などで環境が変わったとしても、生息域が分断されておらず連続した面積がある場合は、種が復活する可能性が高い。延べ面積が多くてもそれがスポット的に点在している場合は難しい。大事なのは連続性、ベルト地帯なのね。それを人為的な土地利用で分断しないように気をつけなければ。

マタギに学ぶ登山技術 [ヤマケイ山学選書] 新書 - 2008/3/19 工藤 隆雄  (著), 木部 一樹 (イラスト)

マタギ奇談 狩人たちの奇妙な語り 単行本(ソフトカバー) - 2016/9/16 工藤 隆雄 (著)

新編 山のミステリー 異界としての山 Mystery of the Mountain 単行本(ソフトカバー) - 2016/6/17 工藤 隆雄  (著)

ひとり歩きの登山技術 [ヤマケイ山学選書] 新書 - 2008/3/19 工藤 隆雄  (著), 松下 佳正 (イラスト)

山関係のサイトやSNSで紹介されていた本で興味がある物を読んで、ふと気がつくとそれはずべて同じ著者の本だった。。。

人の踏み跡で自然を壊さないよう同じ場所を歩かないとか、地面にダメージを与えないよう歩き方にも気を遣うとか、獲っていい頭数や採集していい範囲が決まっているとか、水場を汚さないなど、自然の恵みを持続可能にする大きな視点の知恵があり、また、悪天候への対処方法や野営の方法や熊に襲われた際の逃げ方など、自分たちの安全のためのサバイバル術もある。

マタギは山ではいつでも長靴ですり足で歩く。。。ん?下北半島でカモシカの調査をしている知人と一緒だ。彼はマタギから学んだのか?

マタギは夜山中で行動するとき、懐中電灯は使わないそうだ。消したときに瞳孔が閉じたままになって見えなくなり危ないため。もし使っても消した後に見えるようになるまで1時間でも2時間でも目を閉じておくそうだ。普通の人には真っ暗な中で行動するのは難しいと思うけど、それでもライトの強さを変えないことが大事なのか。。。あたし今まで危なそうな所に来たら点灯するライトの数を増やしてたわ。点けたり消したりしちゃいけないのね。。。

たき火や料理や野営や排泄物の処理に使える便利な植物があるんだけど、その知識があっても野外でその植物を見分けられないと意味ないな、うーむ。あと、農業用ビニールシートとかロープとかすぐに買いに行きたい気持ちになるけど、どこで売ってるのか?農協?そこでふと、そもそも熊を追って何日も山中を彷徨うことなんて、自分にはないのだということを思い出す。

マタギのみなさんは今はもう絶滅して、昔マタギだった人がレクチャーしながら山を案内してくれるツアーなどをする団体があるらしい。面白そう、参加してみたい、子ども喜びそう。入学、入社、成人式など通過儀礼としても需要ありそう。

落葉樹林の進化史

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落葉樹林の進化史 (恐竜時代から続く生態系の物語) 単行本 - 2016/11/19 ロバート・A・アスキンズ (著), 黒沢 令子 (翻訳)

鳥ってすごい! (ヤマケイ新書) 単行本(ソフトカバー) - 2016/2/19 樋口 広芳 (著)

「鳥ってすごい! 」樋口 広芳 (著)を読んで、この本のことを知った。

多様な種の保存に広い面積の樹林帯が必要だということ。災害や気候変動などによって生物の種の存続が危機になるほどの大規模な環境変化が起こったとき、連続した広い面積の生息エリアがあった場合よりも、断片的な生息エリアが点在していた場合の方が、多くの種が絶滅する可能性が高い。たとえばヨーロッパでは寒冷期に落葉樹林帯が南下しようにも地中海に阻まれて絶滅してしまったなど。

東日本大震災の津波の被害でも報告されていたよね。(震災後の自然とどうつきあうか - r2巨大津波は生態系をどう変えたか - r2)大規模な自然災害から逃れるのはほぼ無理だが、惨事の後に元のように自然が復活するには、その生物の生息エリアを分断しないで連続させておくことが大事だということだった。

日本における自然保護の問題点。意識の高い市民のボランティアによる小規模な地域密着型の保護活動は驚くほど盛んで数も多い。しかし、大規模な開発に対抗するなど、経済的な措置が必要な広範囲な活動はできていない。原因はNPO、NGOの税制の問題など政治的な制約にある。日本における環境保護の歴史は、高度経済成長期の公害対策に始まったという経緯がある。日本における環境政策とは=人命を守ることだった。人命に支障が無いならば道路建設など経済活動が優先され、マクロな視点による環境全体への配慮は後回しにされた。(NPO活動の制約が改善されたのは、阪神淡路大震災がきっかけだった)

また、日本人にとって、自然とは日本庭園の美意識に象徴されるように、人工的なミニチュアの世界である。日本人が好む自然とは昆虫。目の前にあり小さな物を好む。特にトンボの人気が高い。

この前に読んだ「ぼくの美術帖 - r2」で原田治が、弥生時代以後の日本は水稲のプランテーションになり、効率と機能性が重視される世界で、独自の美意識が花開く余裕はなかった、というような意味のことを書いていたが、日本人にとって自然=水田や植林された山なのかなあと思う。

「南京事件」を調査せよ

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「南京事件」を調査せよ 単行本 - 2016/8/25 清水 潔  (著)

東京ポッド許可局でプチ鹿島さんが推薦していた本。
推薦図書論2017|TBSラジオAM954+FM90.5~聞けば、見えてくる~

以前、植木千可子さんの「平和のための戦争論」を読んだとき

過去の戦争の原因について検証し総括しなければ、次の戦争の判断もできない。戦争に対する日本政府の政策が不明瞭。謝罪や釈明を意識せずに事実はどうだったかを検証してはどうか。

という著者の言葉が心に残った。歴史の解釈や国益は置いておいて、事実はどうだったのか?という点のみをまずは検証し記録に残す、それなしにこれからの政策は議論できないという。


この本を書くために(実際はテレビ番組のための取材だったが)著者清水潔氏が行ったことはまさにそれ。一次資料にあたる、証人本人に会ってインタビューする、公文書の資料から話の裏を取る。事件からかなり時間が経っての調査は難しかったと思うが、著者よりも先にこの件を同様に調べた人がいて、その資料に助けられる。とにかく資料を残しておくって大事だな。後世の人が何かを調べたいと思ったときの助けになる。

事件の内容は凄惨なものなので読んでいるうちに気分が悪くなって読み通すのがしんどいのだが、著者がこの事件をどのように検証していったかという具体的な足跡が分かる。

もちろん南京事件はあったか無かったかという話題をふられたとき、これからは私は「あった」ときっぱり言える。

この著作に収録されている資料を読むと、南京事件は何故起こったかというと、南京城内と付近の住民100万から私服の兵士を見つけるのが困難だったので、とにかく男性を捕虜として連行したが、今度は全員の水や食糧を確保できなかったので(自分たちのための兵站も全く間に合ってなかった)、困った軍部が揚子江に捕虜たちを引き出し並ばせ計画的に抹殺した(最低でも3万人)。ということになると思う。

私の個人的な感想だが、日本人の感覚では圧倒的な中国の数のスケールに対応できなかったため、キレたのでは?という感じがする。素人の兵士たちが極限状態で未経験のことに面したとき、恐ろしいことが起こる。やはりプロの軍人は「加減がわかる」という点で必要だと思う。

ぼくの美術帖

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ぼくの美術帖 (大人の本棚) 単行本 - 2006/4 原田 治  (著)

最近亡くなっていたことがわかったイラストレーター原田治さんの著作。ポップなイラストで有名な著者だが、この著作はみすず書房より。著者が好きな画家についてのエッセイと、日本美術についての思索。

著者は戦国時代の兜のデザインに魅せられる。当時の時代背景を、フロイスの「日本史」から類推する。。。ところで、はっと思いつくことがあった。「耳鼻そぎの日本史」に、中世(戦国時代)とは、中国の律令制の影響が薄くなり、それ以前の習俗が復活した時代だったとあった。

著者は縄文式土器に残る日本人の美意識が、弥生式土器では見られないという。縄文式とは別のものになったというのではなく、美意識そのものが存在しないという意味で。縄文の後の日本美術はほとんどが大陸からの輸入によるもので、日本人のオリジナルとはいえないと。それが復活するのが、戦国時代。兜という機能や、勝ち負けの意味に関係ない、動植物の不思議なモチーフこそ、縄文的な日本人の価値観や美意識の表れであると。

ここで話が飛ぶが、最近「サピエンス全史」という本が話題になっている。NHKの「クローズアップ現代」の特集を見ただけでまだ読んでいないが、そうよね!と膝をたたいた点があった。それは、農耕の時代は人間が小麦の奴隷になった時代だった、というところ。わたしも日本史とは稲という植物が人間を支配した歴史だと思っていたので、同様の事を思っていた人が居た!とうれしくなった。

日本の中世とは、飢饉により稲の支配が弱まった時代。古代に稲が日本に渡ってくる以前の文化、習俗、価値観、美意識が復活したのでは?外部の文明の影響もあるだろうが、気候変動による内部の食糧事情からも、変化があった時代だったのではと思う。

雑草のくらし

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雑草のくらし―あき地の五年間 (福音館の科学の本) 単行本 - 1985/4/30 甲斐 信枝  (著, イラスト)たねが とぶ (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん) 単行本 - 1993/4/10 甲斐 信枝  (著, イラスト)

自然観察の先輩から教えていただいた絵本。読んでいるうち、以前にもこの本を見たことを思い出した。そのときはなんとなく草の絵を見ていただけだったが、今見るとこの本の意味がまるで違って感じられる。

雑草たちの陣取り合戦―身近な自然のしくみをときあかす (自然とともに) 単行本 - 2004/11 根本 正之  (著)

植物にも生存競争がある。著者の研究は牧草地の雑草対策からだった。甲斐信枝さんの絵本に描かれている雑草のくらしを、さらに科学的に説明してくれている。逆に、この本を読んだ後で「雑草のくらし」を読むと、絵本でありながら冷静で科学的な観察眼によるものだったのだとうなってしまう。

植物の描き方: 自然観察の技法III 単行本 - 2015/5/7 盛口 満 (著)

この本は鑑賞するための植物画の描き方ではなくて、植物の描き方。見たものを画にすることで植物の構造を理解するための手引きになっている。簡略化、描き足し、パターンを貫くなどの技術を使って、種に共通の形態を表す方法。画に描くという行為は言語化することとは反対のことのように見えて、実は言語化の一種でもあるんだなあ。

誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち 単行本(ソフトカバー) - 2016/9/21 スティーヴン・ウィット (著), 関 美和 (翻訳)誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち【無料拡大お試し版】 (早川書房) Kindle版 スティーヴン ウィット (著), 関 美和 (翻訳)
  ソフトカバー    73ページまで無料のKindle版

こんなドキュメンタリーが出版されるとは。mp3の開発者、大手レコード会社の経営者、そして海賊版音楽ファイルを流出させていた工場労働者(一人)、結果として互いに影響を与え合うことになる3人のストーリーもすごいけど、著者もすごい。調査に4年かけたらしいが、事実は小説よりも。。。ですね。

昔、最初に買ったmp3プレーヤーを思い出した。マッチ箱ぐらい(という例えも相当古いが)の小ささで、3万円ぐらいしたが、45分相当しかデータが入らなかった。。。まだiPodが発売される前。1枚のアルバムを24時間ヘビロテで聴いていた頃。

私は当時少数派のMacユーザーでWinユーザーが使っているようなアプリが無かったし(探せばあったのかもしれないけど)、身内にプログラマーが大勢居たので、海賊版には手を出さなかった。海賊版を使うということは友人たちの仕事の報酬がなくなるということなので。だけど、iTunes Storeのようなサービスは渇望していた。実際にiTunes Storeが開始されてみると、メジャーなヒット曲(しかも過去の!)ばかりで、つまらなかったけど。

今、わたしは音楽を探すときyoutubeかsoundcloudを使っている。海賊にやれれっぱなしだったモリスが(海賊に起因する業界再編で出世したんだけど)、最後に孫とyoutubeを見ているときに巻き返しを思いついたというのが不屈な感じでちょっと救われた感じがしたな。

この本に出てくる曲を網羅したyoutubeの再生リストがあったらいいのに。ラップ関係の曲が全然わからんかったわ。2pacとか初めて聴いた。